株主の皆様へ(第5回)
『 IRIの新たな基幹事業を目指す「BBX」の設立について 』
藤原 洋
最近ブロードバンドという用語をよく耳にするようになりました。「ブロードバンド」を直訳すると、「広帯域」ということになりますが、本質的な意義は、「狭い音声帯域」から「広い映像・データ帯域」へのネットワークインフラの転換が、今起こっていることにあると思います。当社の設立の目的は、「インターネット・インフラの運用技術を介して、ネットワーク社会の早期実現を図り、社会発展に貢献する」ことですが、今まさにこの歴史的転換期を迎えました。
インターネットは、第1世代の学術研究('90年代前半に大学・研究機関が主導)から、第2世代の商用化('90年代半ばに初期ISPが主導)、第3世代のキャリアISP('90年代後半に電話会社など通信キャリアが主導)へと発展してきました。当社は、第1世代や第2世代で育った人材を核として、第3世代インターネットのフェーズに設立された、研究開発型ベンチャー企業ですが、「中立性」と「業界発展への貢献」をその基本方針として、事業展開を図ってきました。その最初の挑戦が、'97年にKDD殿(現KDDI)をはじめとして、真にインターネットの発展を指向する企業と発起設立した、日本初の商用IX(インターネットエクスチェンジ)のJPIXであります。次なる挑戦は、米国で急速な発展を遂げているiDC(インターネット・データセンター)を日本において独自に展開することでした。このデータセンター事業については、'98年からパートナー候補2社と交渉を行い、結果的にその両社(Global CenterとExodus)と共同事業を進めることとなりました。
そして今、「ブロードバンド」時代を迎え、インターネット技術による通信と放送の融合が起ころうとしています。この潮流こそが、第4世代インターネット時代の到来であり、PCからモバイルと情報家電によるインターネットへと発展する新たな段階を迎えています。 このたび当社は、世界的企業であるNEC殿と松下電器産業殿と、コンテンツ提供事業者と通信キャリアに対して中立的な合弁会社(ブロードバンドエクスチェンジ株式会社:BBX)を設立することに合意しました。同社は、ブロードバンドコンテンツの集積拠点とブロードバンドアクセスキャリアとの高速相互接続の実現を目指します。かつてVHS、MPEG、DVDなどの標準化において日本が世界に貢献したように、今後ネットワーク技術と情報家電技術とが融合する、"次世代インターネット"の構築へ向けて、優れたパートナー企業と共に挑戦していきたいと考えております。
また、インターネットの発展においては、「囲い込み」と「独占」ではなく、「オープン性」と「リーダーシップ」が、何よりも重要であると思います。当社は、BBXの事業化へ向けて、3社に加え、広く共同事業パートナーを募っていきたいと考えております。
2000年11月8日
株式会社インターネット総合研究所 代表取締役所長 藤原 洋