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所長コラム

株主の皆様へ(第11回)

『 BBXとBBTowerの新経営体制が意味するもの 』
BBX大山茂氏(前NTTコム理事)、BBTower大和田廣樹が就任
~ 水平統合モデルによる協調型ブロードバンドビジネスを展開 ~

藤原 洋

 今年は桜の開花が平年より早く、2002年4月に入った頃には東京近辺は葉桜となり、IRI株主の皆様におかれましてもいつになく暖かい春を迎えられたことと存じます。
 さて、私たちが属するネットワーク業界も、桜色ならぬブロードバンド一色となっておりますが、今回はブロードバンドによる業界地図の変化と当社の最近の取り組み姿勢についてご報告させて頂きます。

ブロードバンドによるネットワーク業界の変化

 2000年から始まったブロードバンド(BB)の普及は、今まさに最盛期を迎えており、以下に要約されるように業界地図が激変しています。

  1. BB普及の牽引者として安定的成長を続けているCATV利用者を、ADSL利用者が2001年11月に追い抜いたこと。
  2. BB利用者の合計は、3月末で400万人2002年末には約1000万人に到達する見通しとなったこと(1000万人というのは膨大な数)。
  3. ADSLの回線シェアは、NTT東西の合計が約40%となり、NTT東西以外のシェアが上回ったこと。
  4. ADSLによるISP(プロバイダーシェア)が、Yahoo!BB(24%)、Nifty(12%)、OCN(11%)、Biglobe(9%)、ODN(9%)という順となり、これまでの圧倒的な優位な事業者がいなくなったこと。
  5. BBの普及により、IRI等が運用するJPIXのトラフィック増加率が急増し、400Mbpsであったのが、現在では9Gbpsを超えたこと。


 このようにブロードバンド(BB)の普及によって業界地図が激変したことは、これまでの従量課金によるキャリアビジネスの構造が変化し、むしろキャリア網を組み合わせて利用する側に大きなIPネットワークビジネスのチャンスが訪れる時代が到来しつつあることを示しています。

BBXに新社長 大山 茂(前NTTコム理事)氏を迎えて

 株式会社ブロードバンド・エクスチェンジ(以下BBX)は、新社長として大山 茂氏を選任しました。大山氏を招聘した理由を以下に述べます。

 BBXは、極めて高度な技術に基づくレイヤ3交換サービスを基本とした第一種と第二種の複合型通信サービスであるため、専任社長として、データ通信サービスの技術的理解と事業経験を有する方を探してまいりました。必然的にNTTグループからということになりましたが、氏のユニークな経歴は、NTTにおいて"電話交換"ではなくインターネット基本技術である"パケット交換サービス"の草分け的存在であったことにあります。また、コンピュサーブやAOLなどが脚光を浴び始めたパソコン通信黎明期にはNTT-PCコミュニケーションズを、さらにインターネット時代を迎えて、NTT分割後のNTTコミュニケーションズでは、親会社の立場からNTTグループとしての最初のISPである「InfoSphere」(NTT-PC)の立ち上げの中心を担っってきたことにもあります。そして、国際通信への初の大規模参入(米国のTier‐1 Carrierとして認知された)となった国際バックボーンサービスの立ち上げの中心人物であり、NTT国際通信においては取締役として経営の中核を担うなど、これらの経験は、BBX社長として最適のキャリアであるといえます。

 これまでのインターネットは、オープンな文化で発展してきました。そして、徐々に企業活動や公共サービスの基幹ネットワークを担うようになり、セキュアな信頼性が求められるようになってきています。オープンな文化を保持しながら発展をし続けるためには、高信頼度のネットワークを構築し運用する技術力と共に、全てを一企業が独占するという姿勢(垂直統合)ではなく、多くのコンテンツや端末事業者、および通信事業者との協調が必要になってきます。大山氏は、この意味で、NTTグループだけでなく、ネットワークを利用する側の方々、さらには他の通信事業者とも協調姿勢をもちながら企業経営を行える貴重な人材なのであります。

 尚、私も大山新経営体制を支えるべく取締役会長として協力させて頂く所存でありますが、BBXも大物専任社長の招聘が完了し、事業展開の新たな段階に入ったことをご報告させて頂きます。

データセンター会社新社名「BBTower」と「大和田新経営体制」の意義

 データセンターを運用してきたグローバルセンター・ジャパン(株)を子会社化するに伴い、新社名を(株)ブロードバンドタワー(略称「BBTower」)に変更し、新社長として大和田廣樹を選任しました。そこで、新社名と新経営体制の意義について述べてみたいと思います。
 冒頭に述べたようにブロードバンド(BB)は、ネットワーク業界に計り知れないインパクトを与えつつあります。今までのナローバンド時代に実現されていなかったいくつかのことがありますが、特に利用者から見て大きな変化は、常時接続/定額課金と高速性であります。常時接続/定額課金であるため、利用者はこぞってダイヤルアップからBBへの移行を進め、また、利用時間も急増しつつあります。そして、高速性からコンテンツの有料化(お金を払うに足りる品質が得られ始めた)が進んでいます。このようなBB環境の下、データセンターのビジネスモデルは、コロケーションスペースの場所貸しを中心としたものから大きく変化しており、次のような役割が極めて重要になってきます。

1.BB接続性が確保されていること(多くのBB通信事業者との中立的接続性)。
2.優良コンテンツが集積していること(新規参入のコンテンツ事業者にとって)。

 以上のようなBB環境への大きな変化の中で、新会社(株)ブロードバンドタワー(略称「BBTower」)が目指しているのは、コンテンツ事業者にとってのBBネットワークにおける「東京タワー」の役割なのです。「BBTower」に設置するだけで、コンテンツ事業者は、最高のBB接続性を手に入れることができ、できるだけ多くのBBユーザーにとってスムーズにBBコンテンツが流れる仕組みを提供する、それが、「BBTower」です。今後は、水平統合事業モデルに基づきBBX網で相互接続されている他のデータセンター事業者も含めて、できるだけ多くのパートナー企業との共同事業を展開するために順次発表させて頂きたいと考えております。

 また、「BBTower」の新専任社長として、創業以来当社のネットワーク事業の担当役員として中枢を担ってきた大和田廣樹を選任しましたが、これは、当面の当社連結決算上最も重要な役割を果たす子会社として位置づけたことを意味しています。さらに、データセンター事業は、当社上場の中心事業であり、ドットコム崩壊によるエクソダスショックなどを経て、目まぐるしく変化するネットワーク業界において、減増資によって外資系企業、しかもデータセンターの元祖であるグローバルセンター系企業を子会社化できる絶好のチャンスと捉えました。近年、伝統ある日本企業が減増資によって外資化されるケースが多かった中で、ある種の意義をも感じております。

 さて、コローケーション(Webサーバ向け場所貸し)だけの低付加価値データセンターは東京地区にて供給過剰気味である中、BB環境に対応できる当社のセンターは希少価値があり、Yahoo!Japan 殿はじめ多くのBB関連顧客が集結しつつあります。時代の転換期にネットワーク業界における成功例を実証することこそが当社の使命であると考えておりますが、引き続き「BBTower」早期黒字化達成の目標へ向けて、業績向上への挑戦を行ってまいります。日本経済は不況脱出の兆しがなかなか見えず、各産業分野は沈滞気味ではありますが、このような時期だからこそBBXとBBTowerを中心とした本業に注力して力をつけていければと日々考えております。

 株主の皆様は、ご多用とは存じますが、次回5月の決算説明会(※)や定時株主総会にも是非ご参加頂きますようお願い申し上げます。
 これをもって陽春の挨拶とさせて頂きます。
(※)当社決算説明会のご参加は、東京証券取引所ホームページ「IPO関連メールサービス」を通じてお申し込みください。会員登録は無料です。

2002年4月
株式会社インターネット総合研究所 代表取締役所長 藤原 洋

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