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所長コラム

株主の皆様へ(第12回)

『 通信キャリア大再編時代における当社の事業戦略について 』
~ IP-Centric Enterprise Solution事業展開へ向けて ~

藤原 洋

 台風の後、梅雨明け宣言がなされ、今年も本格的な夏を迎えました。猛暑到来の中、インターネット業界にあっては、益々ヒートアップする大発表が行われました。株主の皆様にあられましては、同業界に大変ご関心を寄せておられることと思いますので、IIJ、パワードコム、TTNetなどの経営統合の意味するものと、当社の最近の活動との関係について述べさせて頂きたいと存じます。

技術革新がもたらしたネットワーク業界の変化
~IIJと電力系キャリアとの経営統合の意味するもの~

 今まさにブロードバンド・インターネット時代へ向けての絶頂期を迎えており、6月末時点の利用者数は、約500万人に到達しています。しかし、その背景には最近の技術革新によってもたらされたネットワーク業界の激変を方向付ける以下の3つに集約される状況があります。

  1. 高密度光波長多重伝送技術(DWDM)の進化により、国内・国際バックボーンの回線容量が飛躍的に増大し、供給過剰状況となっている。
    →米国におけるワールドコム社、ウィリアムズ社、グローバルクロッシング社、MFN社等、光ファイバによるIPキャリアの相次ぐ経営破綻
  2. ワイヤレス技術の進化による固定電話から携帯電話への急速な移行が進展
    →NTTドコモ、au、Jフォンの移動通信は好調だが、固定通信キャリアの収益性の急低下
  3. ADSL、CATV、FTTHを中心としたブロードバンド(BB)の普及によるISP業界の激変
    →ポータル+インフラをもつYahoo!BBの登場によって加速される、「Nifty/Biglobe型ポータルISP」と「IIJ型インフラISP」への二極分化の進展


 このような背景の下で、IIJグループは、ISPの草分け的存在で、高い技術力と顧客基盤をもつ一方、傘下に採算性悪化が懸念されるIPキャリア業界に属するCWC(クロスウェーブ・コミュニケーションズ)を持ち、収益性低下の防御策が必要であったと推測されます。一方、電力系キャリアは、国内で唯一NTTグループと対抗できる企業向けのアクセスラインを有しており高い潜在力をもつ一方、IPネットワーク運用に関する営業力と技術力において、NTTグループを脅かす存在になるまでには至っていませんでした。この両社の長短を補うことで、企業向けのアクセスライン+国内・国際バックボーンまで一貫した専用線、広域LAN、およびIP接続サービスを提供する大規模固定通信キャリア(固定無線を含む)として生まれ変わり、電力会社という潤沢な資金を有する企業グループの傘下に入ることで経営の安定化を図る狙いがあったと思われます。この結果、今回の経営統合によって生まれる新会社は、企業向けの固定通信サービスにおいて、NTTグループとの真っ向対決を行う姿勢が鮮明になったといえます。

「BBX」と「BBTower」の行方とは?
~IIJ+電力系キャリア統合の影響~

 株式会社ブロードバンド・エクスチェンジ(以下BBX)は、2002年4月に前NTTコミュニケーションズ理事の大山 茂氏を新社長として招聘し、レイヤ3交換サービスを基本とした第一種と第二種の複合型通信サービス事業を展開しております。専任社長就任を契機に、Biglobe、hi-hoといったポータル型ISPとCATV局の顧客を中心に顧客数が急増しております。BBX(東京電力も出資)は、通信キャリアに中立の、メトロポリタン(大都市圏)エリアにおけるブロードバンド通信事業者間、コンテンツ事業者間の相互交換サービスを提供しており、NTTグループやIIJ+電力系キャリア統合会社と直接競争する事業領域ではないため、今回の経営統合の影響は全くないものといえます。

株式会社ブロードバンドタワー(略称「BBTower」)は、2002年4月から当社が67.5%の株式を保有するブロードバンド配信センター会社として生まれ変わりました。全く新たなタイプのキャリアフリーの中立的・独立型iDC(インターネット・データセンター)として当社取締役の大和田廣樹社長の経営のもと、好調に顧客獲得を続けております。キャリア型iDCと異なり、9社のキャリアラインが直接引き込まれていることと、Yahoo!に代表される有力コンテンツ・プロバイダー、ポータル事業者の集積が起こっており、BBTowerユーザーにとっては、様々なポータル事業者との連携を図れるインターネット・ビジネスの交流拠点としての性格を強めています。このようにBBTowerは、通信キャリア事業ではないため、今回の経営統合の影響は全くないものといえます。

通信キャリア大再編時代における当社の事業戦略
~通信キャリアからエンタープライズへの顧客層の拡大~

 当社は、これまで、IPネットワークの設計・構築・運用技術をコアコンピタンスとして、主として、NTTグループ、KDDIグループ、日本テレコムグループなどの通信キャリアを顧客として、また合弁事業として、通信キャリアに中立の通信サービスであるJPIX、BBX、BBTowerの運用を行ってきました。

 ブロードバンド(BB)の進展は、ネットワーク業界に計り知れないインパクトを与えつつあります。特に利用者から見ての大きな変化は、常時接続/定額課金と高速性であります。この結果、企業、特に全国に分散拠点をもつ企業群が低価格化と多様化が加速する様々な通信キャリアサービスの選定と、プライベートIPネットワークの構築ニーズが急増しています。そこで、当社では、これまで培ったIPネットワーク技術をベースに、BBTowerを拠点とし、BBXと様々な通信キャリアサービスを組み合わせたキャリア中立のIP-Centric Enterprise Solution(IPのトラフィックエンジニアリングを中心に据えた新たな設計思想による企業内ネットワーク)提供事業を行ってまいります。このため、この7月1日からIRI本体のIPインフラ事業部を改組し、「ネットワーク事業部」に改めると共に、エンタープライズ顧客開拓を行う「ビジネス開発グループ」と通信キャリア顧客を対象とする「サービス開発グループ」を新設しました。今後、IRIグループでは、IPネットワークサーバーの24時間運用保守のインターネットC&O(IRI 56.3%)、メディアマーケティングのIRI-CTなどのグループ内リソースを基本に、基幹業務系アプリケーション技術に強い旧メインフレームコンピュータメーカーやシステムインテグレ―タとの事業提携を強化していく予定であります。

 株主の皆様は、ご多用とは存じますが、次回8月の決算説明会(※)や定時株主総会にも是非ご参加頂きますようお願い申し上げます。
 これをもって暑中の挨拶とさせて頂きます。
(※)当社決算説明会のご参加は、東京証券取引所の「東証IPO Information Service」を通じてお申し込みください。会員登録は無料です。

2002年7月
株式会社インターネット総合研究所 代表取締役所長 藤原 洋

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