株主の皆様へ(第15回)
『 最近の当社の活動状況について 』
~ 2003年を迎えてのご挨拶:BBTowerをコアに ~
藤原 洋
長期化するデフレ経済下においてもIRI株主の皆様にあられましては、社会情勢の本質を見抜き、将来の世界経済と日本経済に対する展望をお持ちのこととお察し致します。当社にあっては、上場前までの「創業期」、上場後から前期までの「先行投資期」から一転し、本事業年度である第7期を「成長期」として位置づけた事業展開を行っております。2002年は、この事業フェーズの過渡期に当たる年でした。今回は、昨年を振り返ると共に、主として内面における近況報告をさせて頂き、新春の抱負を述べさせて頂きたいと存じます。
BBTowerをコアに
2002年は、米グローバルクロッシング社の経営破綻を発端とし、債務超過が間近に迫った旧グローバルセンタージャパン株式会社(当時のIRIの出資比率は約12%)をどうするのか?という重要課題で明けました。社内でも、米国における専業最大手エクソダスコミュニケーションズ社、通信大手のワールドコム社などの相次ぐ経営破綻から、iDC事業への不透明性からの撤退論と、チャンス到来とする積極論とで、完全に意見が二分された状態でした。「判断は頭でするが、決断は腹でする」という格言の通り、結果的には、子会社化という「決断」でした。
このような局面においては、必ずしも机上の事業計画は、判断や決断に有効ではないように思います。上場時の当社目論見書には、iDC事業を行うために上場するのであり、iDC事業は、当社のコア事業である旨が記されていました。決断理由は、企業のアイデンティティを守るのか、喪失するのか、という一点であったと思います。第1位米アジアグローバルクロッシング社、第2位ソフトバンクネットワークス、そして第3位マイノリティがIRIという株主構成において、当社には、マイノリティながらネットワークの構築・運用は勿論、実質的な営業活動も自分たちが行ってきたという自負と思い入れがありました。
しかし、iDC事業はアメリカのドットコム崩壊と共に、元祖のグローバルセンター(後にエクソダス社が買収)、エクソダス社、デジタルアイランド社、アバヴネット社(後にMFN社が買収)などがことごとく経営破綻したなど、本当の意味での成功例はまだアメリカにも見当たらないという状況で冷静な経営判断が求められていたのでした。当然、事業は思い入れだけで成立するものではないことは事実ですが、究極の局面では、「逃げない経営」には、思い入れも重要なように思います。
3社間の協議の結果、月次で1~2億円の赤字経営が続いていた同事業に対する追加のリスクマネーを出すのは当社だけとなり、ここからは米国企業とのタフな交渉になったのですが、結果は、10分の1減資後に、新株引き受けによる3分の2以上の株式取得というものでした。2002年当初から3月末にリスクマネーとして約8億円を投入するまで3ヶ月しかありませんでしたが、この期間中に新iDC事業会社の社長を誰がやるのか?特徴をどうやって出していくのか?供給過剰が続くiDC業界の中で、どうやって顧客獲得を行うのか?等の難題が山積していました。
このような混沌とした状況の中で、「自分が社長をやりましょう」と"火中の栗拾い"を大和田廣樹取締役が名乗り出てくれました。専任社長が決まり、「逃げない経営」の先陣を務めるということがコミットされたことは、極めて大きな転機になりました。大和田新社長の下、4月には有能なプロパー社員に加え、精鋭のIRIからの出向社員の新チームが発足しました。新子会社は、アメリカ生まれのiDCを"ブロードバンド先進国日本"のネットワーク風土に適合させる新しいコンセプトの会社にしようという意図で社名変更し(株式会社ブロードバンドタワー:BBTower)、再出発することになったわけです。米国企業間の買収劇に翻弄され、結果的に子会社化してから8ヶ月が経過しました。一時は月に2億円も赤字だったのが、月次収支が急速に改善され、12月24日のクリスマスイブには、既存スペースが満杯間近となり、"増床のお払いの儀"を執り行うまでになりました。ここまでBBTowerの収益が向上してきた原因は、いくつか考えられます。第一は、米国での専業iDC事業者の破綻は米国事情であり日本とは環境が異なること、第二は、iDC事業ブームで約90%の供給過剰市場になったが、米国系iDC事業者や国内便乗iDC事業の採算割れによる相次ぐ撤退で、最高トラフィック運用実績のあるBBTowerへの"引越し需要"が急増したこと、第三は、事業パートナーである株式会社NTTデータ殿のファシリティ面を中心とする優れたサポートがあったこと、第四に、手前味噌ではありますが、大和田社長を中心とするBBTowerのメンバーの心意気とバックボーン運用を支えるIRIの優れた運用技術、ということだと思います。
以上のような背景から、今年は、このBBTowerを中心にした収益向上策をとっていく方針であります。具体的には、IRIグループ全体のエンタープライズ顧客に対するIPネットワーク関連のコンサルティング、ネットワーク設計・構築・運用の顧客サーバおよびネットワークシステムの収容拠点としてBBTowerを位置づけることにより、従来の単発的なコンサルティング事業の体質からリピートオーダーが蓄積されていくビジネスモデルへの質的転換が進むことを意味しています。
株主の皆様は、ご多用かとは存じますが、2月中旬の中間決算発表会(※)にも是非ご参加頂きますようお願い申し上げます。厳しい日本経済の環境下ではありますが、皆様のご健康とご健勝を祈念し、本年年頭のご挨拶とさせて頂きます。
(※)当社決算説明会のご案内及び参加お申し込み受付は、東京証券取引所ホームページ「IPO関連メールサービス」を通じて行っております。会員登録は無料です。
2003年1月6日
株式会社インターネット総合研究所 代表取締役所長 藤原 洋