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所長コラム

株主の皆様へ(第20回)

『 "日本テクノロジーFast50"4位受賞の意義と当社の今後の成長シナリオ 』
~ 受賞式のご報告とご挨拶 ~

藤原 洋

 当社は、2003年9月25日に、国際会計事務所であるデロイト トウシュ トーマツ殿が新設された「日本テクノロジーFast50」2003の第4位にランキングされました。この受賞式の模様についてご報告させて頂くと共に、今回の受賞を契機に、当社の成長フェーズを自己分析すると共に、今後の成長シナリオ、および受賞のご挨拶を述べさせて頂きたいと存じます。

1.受賞式の概要
  ~成長企業50社が一堂に会した熱気~

 東京アメリカンクラブにて、9月25日午前11時30分、IT技術系企業での成長率ランキングベスト50社の代表が招待され、成長意欲満々の企業だけが集まる熱気に包まれた会合が幕を開けました。最初に監査法人トーマツ包括代表社員 阿部紘武氏による同賞新設の意義についての挨拶の後、株式会社NTTデータ初代社長 藤田史郎氏による基調講演があり、急成長企業の分野別分析などの解説が行われました。最後にランキングが50位から5社ごと順に発表され、壇上にて表彰という手順で行われました。本表彰においては、事前に順位を聞かされていなかったため、最後の5社が残った時、会場全体に緊張感が漂いました。受賞式後には、トップ10社による記者会見が行われましたが、以下に当日の概要についてご報告させて頂きます。

(1)非常に感銘を受けた藤田史郎氏による講演の要約は以下の通りです。

  • 企業経営の環境は、3つの社会変革によって大きく変わっている。
    その1:
    「価値観の変革」
    有形から無形品質へ、特にサービス品質の価値へと変化している。
    その2:
    「省資源への変革」
    循環型社会となり、静脈産業への転換が進んでいる。国連大学の提唱するゼロエミッション型よりも人体モデルが有効である。
    その3:
    「環境経営への変革」
    単純な利潤追求ではなく、CSR(Corporate Social Responsibility)が重要で適切な開示、利益と倫理のバランスが、企業経営に要求されている。
  • 21世紀型の生産者/消費者関係は、消費者主導型へ大きく変わり、ストーリー型の関係、即ち十人十色から更に十人百色までをカバーする多様な顧客需要への対応が要求されている。
  • 日本における産業構造の効率化のポイントは、製造業よりもサービス業にあり、生産効率の対米比は、前者が1.2倍なのに、後者は、0.6倍でしかない。
  • 経営は、創造的であるべきだが、数学者の広中平祐先生の言葉通り、「むきになれない社長には創造は出来ない、むきになっている時は、創造は生まれない」。
  • 日本は、メカトロニクスなどxx-toronicsに向いている。
  • 成長企業の経営者は、現場主義に徹底した経営をして欲しい。

(2)受賞理由
 今回当社が、テクノロジー系企業成長企業として認定され、4位にランキングされた理由は、以下の業務内容が技術系ベンチャー企業として適格であり、高い成長率を記録したことによるものです。
【業務内容】
 インターネットの二大要素であるルータとサーバを組み合わせたIP(インターネット・プロトコル)ネットワークの設計・構築・運用技術に特化した総合シンクタンクで、3つの顧客ドメイン(ネットワークインフラ事業者、コンテンツ提供事業者、ネットワーク機器メーカー)に対する技術支援サービスを提供している。グループ連結経営を重視しており、当社は、3つの顧客ドメイン向けのコンサルティングおよび関連会社への投資事業を行っている。関連会社では、ネットワークインフラ事業者向け運用受託とトラフィック交換サービス、コンテンツ提供事業者向けWebサーバの運用受託サービス(インターネットデータセンター事業)、ネットワーク機器メーカー向けシステム部品提供を行っている。
【成長率ランキング】
 2001年3月期から2003年3月期(当社の場合2000年6月期から2002年6月期)までの事業規模の伸び率を競うもので、当社は、約11.3億円から77億円の578%(正味2年で約6.8倍の成長)で4位となりました。上位は、創業年度が評価初年度と一致している創業3年の成長企業が占めました。ベスト10受賞企業は以下の通りです。
 1位:株式会社ジー・モード(成長率5,624%)、2位:アンジェスエムジー株式会社(2,874%)、3位:株式会社フォーサイド・ドット・コム(1,671%)、4位:インターネット総合研究所(578%)、5位:株式会社シーフォーテクノロジー(556%)、6位:株式会社ドワンゴ(533%)、7位:エッジ株式会社(388%)、8位:株式会社システム・テクノロジー・アイ(372%)、9位:バリューコマース株式会社(357%)、10位:株式会社ネオテクノ(280%)

2.当社の3段階の成長フェーズの自己分析と今後の成長シナリオについて
  ~東証マザーズ1号上場と今回の「Fast50」4位受賞の意味~

 ここで、当社のような技術系ベンチャー企業が、技術とは異なる資本主義というルールのもとに、激しい競争に勝ち残り、成長していく過程では、以下の3段階の成長フェーズでの異なる競争があると思われます。第1フェーズの競争を勝ち抜く上で東証マザーズ上場は、最適な場であると考えております。また、今回の「Fast50」4位受賞は、第2フェーズを勝ち抜く上で大きな励みとなりました。

第1フェーズ:【資金調達における競争】
 この段階における技術系ベンチャー企業には、有能な人材を集め、将来の収益性ある企業競争力の基礎体力=研究開発、サービス・製品開発を行える先行投資能力を備えることが要求されます。当社は、幸運にも、第3期終了直後に東証マザーズが新設され、他の1社と共に、その第1号上場企業となることができました。同市場から公募増資資金約109億円、即ち、成長のためのタイムリーで最適な先行投資資金の調達に成功しました。また、更なる事業拡張のため、リーマン・ブラザーズ・コマーシャル・コーポレーション・アジア・リミテッドへの第三者割当増資枠20億円を確保できたことは、マザーズ上場企業としての成長性と財務の健全性に関する当社への評価がなされたものと解釈しております。

第2フェーズ:【顧客獲得における競争】
 如何に優れた技術を有していても顧客が獲得できなければ、いずれキャッシュフロー上での限界を迎えます。このため、技術系ベンチャー企業にとって、資金調達力と同時に、営業力、即ち、売上規模の成長力は、特に重要です。当社は、株式上場後は、先行投資と共に顧客獲得に注力してまいりましたが、今回のFast50で4位にランキングされたことは、顧客獲得競争における成長性が客観的に評価された、極めて大きな第2フェーズでの成果だと受け止めております。しかし、この成果に甘んじることなく、第8期より新経営体制の下で、今後もさらにこの顧客獲得指向を強化するための構造改革に着手致しました。即ち、これまでの"ネットワーク機器に触れることが主体のエンジニア企業IRI"から脱皮した新たな企業文化創造への挑戦であります。新体制下では、セールスマンは、徹底した顧客ニーズの収集、また、エンジニアは、後述の顧客と共同でのコンソーシアム+フォーラム活動を通じて市場開拓を行ってまいります。この当社独自の"セールスマンもエンジニアも顧客と接する全員営業型企業IRI"を定着させ、Fast50受賞が今回に終わることなく、継続受賞できる体質を作っていく所存であります。

第3フェーズ:【株式市場における競争】
 株式市場における評価は、株主の皆様にとっての最大の関心事であると共に、当社にとっても同様に極めて重要であると認識しております。それは、今後の更なる成長のための事業や企業の買収、および将来の競争相手との企業買収合戦に備える上で重要な意味をもつからです。本フェーズに入ると、技術系ベンチャー企業にとっても、株式市場における評価=株価そのものが、意味をもつ段階です。株式交換によって、技術面で補完し合える技術系ベンチャー企業を協調的にグループ化していく成長構造が、当社の目指す成長スタイルであります。当社とビジネスモデルは、異なりますが、成長フェーズと企業文化が、極めて近い企業としては、ルータ・スイッチ機器のトップメーカーで当社よりも約10歳年上の米シスコシステムズ社があります。また、このフェーズに入ると、成長性に加えて、収益性の実証が厳格に求められるようになります。このような背景の下、当社にとっての今回の「Fast50」4位受賞は、営業利益が先行投資を上回る端境期、即ち、第2フェーズから第3フェーズへの移行を意味するものであると考えております。

 今回、強い影響力のある国際会計事務所デロイト トウシュ トーマツ殿からの評価を受けた要因は、以下の3つに集約されると思われます。

[1]
あらゆる産業に関わる技術革新の原動力であるIPネットワークの技術開発に特化していること。
(市場の広範性と経営資源の集中)
[2]
上記3つの顧客に対して中立的な非設備産業型のビジネスモデルを構築していること。
(大企業との競合と設備投資リスクを回避)
[3]
上場企業の特徴を活かした積極的なM&A戦略を遂行していること。
(株式交換による企業買収手法の活用)


 以上の要因分析の下に、次年度以降も継続して高い成長率を維持するには、 以下の2つの新事業分野を開拓し将来のビジネス計画に反映させることが必要だと考えております。インターネット技術の2つの新分野への適用を行い、知的財産権の確保と共に、事業化を目的として最近新設したコンソーシアム+フォーラム活動(IPv6センサネットワーキング・コンソーシアム、エンタープライズ・コラボレーション・ネットワーク・フォーラム)を主導することで、IT業界だけでなく産業界全体に対する中立的な共同事業の提案を行ってまいります。

[1]
ブロードバンド固定通信網、モバイル通信網、およびディジタル放送網の統合ネットワークサービスのコンセプトを提示し、3つの顧客ドメインに対する技術支援およびサービスを提供する。
[2]
機器間コミュニケーションを目的としたIPv6(次世代インターネット)による計測制御ネットワークのコンセプトを提示し、3つの顧客ドメインに対する技術支援およびサービスを提供する。

3.受賞のご挨拶
  ~激しい競争を通じた栄誉と感動~

 このたび「日本テクノロジーFast50」を受賞したことは、この上ない栄誉であると共に、世界をリードする立場の国際会計事務所であるデロイト トウシュ トーマツ殿が、テクノロジーを基本とした企業の成長性に着目し、本賞を創設されたことは、日本経済の活性化にとって極めて意義深いことだと敬意を表したいと思います。
繰り返しになりますが、企業経営は、資本主義というルールに基づくフェアな競争です。特に技術系ベンチャー企業には、プロスポーツの世界と共通するものがあり、自分達の技術力が社会で認められるか否かの実に激しい競争の世界で闘っている訳です。このように世界は異なりますが、我々の想いと共通した感動を呼ぶイベントが10月7日夜甲子園で行われました。各種新聞報道もありましたが、10月8日の朝日新聞朝刊一面によると:敵地で万感 今季限りで辞任するプロ野球・巨人の原監督(45)は7日、阪神甲子園球場での阪神戦で、最後の指揮を獲った。試合後、ライバルの星野監督から花束を手渡され、「近い将来、ユニホームを着るやろ。くじけるな。しっかり勉強せえよ」と励まされた原監督は思わず涙ぐんだ。敵地にもかかわらず、異例のお別れあいさつのためにマイクを持った原監督は「必ず日本一を勝ち取ってください」と阪神にエールを送った後、「プロ野球はファンの皆さんのおかげで成り立っています。プロ野球、阪神、巨人をこれからもよろしくお願いいたします」。契約途中で辞任せざるを得なかった立場と、本拠東京ドームでのあいさつがかなわなかった思いのにじむ言葉に、阪神ファンからも大きな拍手が送られた。・・・とあります。技術系ベンチャー企業の経営に携わるものにとって、ファンの皆さんのおかげで成り立っていますという言葉を、株主の皆様と置き換えると、つくづく共通する世界にいるのだと感じます。我々、技術系ベンチャー企業の活動も、激しい競争の中で、時には冷酷な勝敗を通じて、その結果得られる栄誉と感動を求めているのだと思います。

 さて、日本経済において、バブル崩壊後の産業政策に決め手が見つからない中で、大企業の自主的リストラによって企業収益力の回復が進んでいます。しかし、雇用なき景気回復に限界がある中、今回の受賞企業等が中心となって、新たな産業と21世紀型雇用を創出することが重要だと考えます。当社も今回の受賞を契機に、藤田史郎氏が指摘されたCSR(Corporate Social Responsibility)型企業を目指し、独自技術による基礎体力の向上、更なる事業規模の成長、そしてその結果として得られる第3フェーズにおける勝利に向って、株主の皆様と共に進んでいきたいと存じます。今後ともよろしくご指導・ご支援の程お願い申し上げます。

2003年10月9日
株式会社インターネット総合研究所 代表取締役所長 藤原 洋

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