株主の皆様へ(第25回)
『 新年のご挨拶 』
藤原 洋
新年あけましておめでとうございます。
IP(インターネットプロトコル)は、20世紀の世界を変えた半導体・トランジスタの発明にも匹敵する21世紀の世界を大きく変える技術革新だと思います。2004年は、当社の経営理念である「Everything on IP, and IP on Everything」を顕在化させる年になると考えております。
かねてから、IPによる技術革新は、1990年代に商用ISP(インターネット・サービス・プロバイダー)、キャリア系ISP、および検索エンジンや各種eコマースなどCSP(コンテンツ・サービス・プロバイダー)を登場させ情報産業に大きな変化をもたらしました。いわゆるサイバースペースの創生でした。その歴史的転換点において、当社は、小規模ながら、株主の皆様のご支援によって、初の商用IX(インターネット・エクスチェンジ)、初のモバイルIPサービス、初の専業iDC(インターネットデータセンター)などの創生に関わり、主としてキャリア系ISPとCSP事業者殿へのITP(インターネット・テクノロジー・プロバイダー)として歩んでまいりました。
さて、当IRIグループが本年から研究開発とビジネスの両面において顕在化させていこうとする分野は、IPによる「リアルスペースの創生」であります。当社は、IPを「サイバースペースの創生」のための技術革新の時代から進化させ、製造・運輸・交通・物流などあらゆる実空間上における人間社会の活動に適用分野を拡大することに注力しております。そして、この「リアルスペースの創生」を「ユビキタス」というキーワードと捉えています。新年を迎えるに当り、その具体的経営ビジョンとしては、以下の4つを考えています。
第1に、2002年10月に設立したIRIユビキタス研究所をIRIグループ全体の共同利用研究開発機関として位置づけ「IRI-Ubilabs Innovations」の標語を新設します。この標語新設には、「IPによるリアルスペース創生」を産業としてIRIグループが担っていくという意味が込められています。
第2に、当社事業の出発点であるネットワーク・サービスのコア技術を提供する「IPネットワーク事業」については、連結子会社であるBBTower、BBX、ICOの3社については、上場を視野に入れた個別強化を進めた上で、「強い企業同士の連携」を更に深めていきたいと思います。
第3に、IPを様々な機器に組み込むコア技術を提供する「IPプラットフォーム事業」については、IRIユビキタス研究所との連携を強化し、連結子会社のタウ技研を中心に展開してまいります。タウ技研は、新経営体制の下、従来の着実な企業の伝統を守りつつ、株式上場を視野に入れた成長が楽しみな企業へと発展させてまいります。
第4に、強い企業グループの構造的創生への挑戦であります。「強い企業」とは、「深く広い事業ドメインを有する企業」であると思います。深い事業ドメインを1つだけ有する企業はそれだけで価値があり尊敬に値しますが、成長性に限界があります。浅い事業ドメインを沢山有する企業は、総合性はありますが、個々の競争力が脆弱であるため、いつも後ろ向きのリストラに追われるように思えます。また、いくら大きくても事業展開が日本国内に限定されている企業にも限界があると思います。
日本企業の中で強い企業を3つあげるとすれば(50音順で)、キヤノン、トヨタ自動車、本田技研工業があります。この3社は、極めて深く、広い企業展開を行っています。しかし、この3社にも、成長過程での失敗は多少あったようですが、失敗を早めに失敗と認め、次の成功へと転化させてきたところが素晴らしいように思えます。いずれにしても、日本を代表するこれらの強い企業には、少なくとも3つの強い事業やプロダクトがあり、そして、その競争の場は世界だ、ということだと思います。
今年は、「IPネットワーク事業」「IPプラットフォーム事業」の個々の事業ドメインを深く掘り下げることを第一に掲げると共に、3つ目の柱を準備したいと思います。さらに、昨年末にはデロイト・トゥシュー・トーマツのアジア太平洋地域テクノロジーFast500の26位の受賞式に香港まで出向き、世界の広さを改めて、感じましたが、身の丈に合った世界への挑戦を始めていきたいと考えています。
旧年中は、株主の皆様のご支援により、株式市場での評価も1桁高まったと思いますが、今年も高い目標と地道な積み重ねで、株主の皆様と顧客の皆様から更なる評価を得られるようにステップアップすることを宣言して、新年のメッセージとさせて頂きます。
2004年1月6日
株式会社インターネット総合研究所 代表取締役所長 藤原 洋