株主の皆様へ(第32回)
『 最先端医療機器・医療情報システム技術分野に本格進出 』
~ ファイバーテック社と株式交換による100%子会社化の背景 ~
藤原 洋
株主の皆様にあられましては、日頃から格別のご支援を賜り誠に有難うございます。当社は、一貫して21世紀の技術革新を担うIP技術に特化したテクノロジー企業として活動しておりますが、今回は、当社上場以来初の全株株式交換によるファイバーテック社の100%子会社化を平成16年7月22日の取締役会にて決定した背景について述べさせて頂きたいと存じます。
1.IP技術の工学・産業上のインパクトと今回の医用工学分野への進出
インターネットは、TCP/IP(Transmission Control Protocol/ Internet
Protocol)と呼ぶ通信規約によって相互接続されたネットワークです。ここでTCPは、末端のコンピュータ同士の通信を保証し、またIPは途中の経路制御(ルーティング)を行うものです。特にIPは、単にコンピュータを相互接続するという直接的な効用に留まらず、20世紀の半導体をはるかに超える影響力があると思われます。工学史的な視点では、インターネットによるサイバースペース技術をあえて分類すれば、最新の情報工学の範疇に入ります。その基礎は、通信と電子であり、応用としての医用工学、その元は電気、古くは、機械と化学等があり、さらに古くは、建築、最古の土木工学へと行き着きます。半導体は、電子工学上の発明に留まりますが、インターネットは、情報工学だけでなく、工学と他の学問体系を根本的に変えつつあります。通信は、その直接的影響を受けていて、IPを基本とした新体系が生まれています。いずれは、最古の工学、土木工学に至るまで、また、経済学、法律学などもインターネット社会を前提とした再構築を迫られることになると思われます。
当社は、このような視点から「Everything on IP & IP on Everything」をグループの経営理念として、従来よりIPネットワーク事業およびIPプラットフォーム事業の2つの事業への先行投資を行い、積極的な展開を行ってまいりましたが、上場後初の投資回収利益を確保した第8期を終了し、第三の柱となる事業を模索してきました。
このような背景から、この度、21世紀の産業創出のもととなる技術革新はIP(Internet Protocol)技術であるという基本理念の下、IP技術による技術革新を起こすべく最先端医療技術分野に進出すること、その第一弾としてファイバーテック株式会社(以下、FT)を株式交換により完全子会社化する方針を決定いたしました。
2.IRIグループの医用工学分野でのコアとなるファイバーテック社とは?
医用工学分野はIT化・IP化が大きく遅れている分野の一つであり、IP化による技術革新によって大きく発展する分野で、当社グループが創業以来培ってきた技術や経験を活用し当社グループの強みが発揮される分野であると考えてきました。完全子会社となるFTは、現在、外径1mm以下という極細径内視鏡の開発・製造・販売を主力事業とし、同分野では最先端の開発・製造技術をもとに圧倒的な市場競争力を有しております。IRIとFTは、昨年秋からスタートした産学官連携の医療画像無線伝送産学連携コンソーシアムにおける中核企業として参加しており(http://www.iis.u-tokyo.ac.jp/shourei/rc2003/rc46-2003.html)、東大医学部など医療分野において大学病院との広範な連携を通じて、医療現場でのニーズを発掘して製品の開発・製造に生かしております。また、製品の輸出等の海外展開や医療分野におけるIT化への取組みも積極的に行っており、現在の事業については、前期中に先行投資を終えた段階であり、今期からは、前年度比約2倍の事業規模の拡大と黒字転換を期待しております。また、次年度以降も約2倍の事業規模と収益性の向上を期待しております。
3.株式交換による100%子会社化手法と今後の展望
出資をしていない企業に対する株式交換という手法は、IRIが1999年12月22日の上場以来、初めての企業買収手法であり、当社が成長モデルの規範としている米シスコシステムズ社が成長の有効的手法としてビジネスプロセス化しているものです。今回のFTのIRIグループ入りは、両社の経営者同士での経営ビジョンの一致を確認し、両社が協力して更なる成長を共通目標として共有できて初めて成立するものであり、両社の経営者がIRIの株主として株主の皆様と共通の目的である企業価値の更なる向上を目指すことを意味します。今回の株式交換100%子会社化を契機に医療分野におけるIP化による技術革新を積極的に進めてまいります。今後は、FTをグループにおけるIPメディカル事業の中核会社として位置付け、医療機器および医療情報システム分野における優れた技術を有する企業をM&A等によりグループ化することで業界再編を行い更なる成長・発展を図り、5年以内に百億円規模の第三の事業の柱へと育成していく所存であります。
以上
2004年7月22日
株式会社インターネット総合研究所 代表取締役所長 藤原 洋