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所長コラム

株主の皆様へ(第36回)

『 東証マザーズ5周年記念と当期第1四半期黒字決算の御礼 』
~ 新興市場の発展と当社グループが迎えた新たな局面 ~

藤原 洋

 2004年11月10日は、株主の皆様のご支援によりまして、感慨深い第一四半期決算発表となりました。その理由は、時を同じくして、東証マザーズが市場開設5周年記念を迎えたからです。新興市場は、チャレンジ精神溢れるベンチャー企業に対して、直接金融による資金調達の道を拓くもので、歴史的には、工業社会から情報社会への移行を図る上での最も重要な社会インフラとなる存在だと思われます。今回は、株主の皆様に対する深い感謝の意を込めて、今回迎えた東証マザーズ5周年と当社グループの完全黒字化の意味するところについて述べさせて頂きます。

1.東証マザーズの5周年

 日本は、インターネットの商用化が始まった20世紀末から「失われた10年」といわれる長期にわたる不況に陥ってきました。その後の日本政府による構造改革は、果たして成功しているのか?その答えは、いずれ歴史が証明することになると思われますが、このたび内閣府は、「構造改革評価報告書3」を作成するタスクフォースを設置し、IT政策がどのような経済効果をもたらしているのか?に関する評価を行いました。本タスクフォースの委員の多くは経済学者でしたが、私は、インターネット業界から唯一参加させて頂き、ブロードバンドの普及を中心に実行されてきた「IT政策の経済効果」について、IT社会の基盤整備、ITの利活用、およびITの経済効果についての成果と課題、さらには課題解決の方向性についてまとめたところであります。この評価作業を通じて、これまで抱えてきた問題意識を整理することができました。

 しかしながら、ここで併せて考えるべきことは、経済発展の担い手、技術革新の担い手は、かつてのAT&Tベル研究所やIBMのワトソン研究所のような大企業のメガラボに加えて、ベンチャー企業の役割が増大してくるという点です。そこで、研究開発の実行主体にリスクマネーを供給する社会的仕組みが必要となるわけですが、20世紀後半のアメリカ経済の成長にとって、NASDAQの存在が大きかったと思われます。今日のIT産業をリードするインテル、マイクロソフト、シスコシステムズなど多くの研究開発型IT企業は、NASDAQをコアとする直接金融市場の中で育ってきました。土地や設備を担保に銀行が事業資金を融資する間接金融市場は、資本主義の第一段階としての工業社会の仕組みであり、情報社会にはこれだけでは不十分であると思われます。この意味において、東京証券取引所がNASDAQに相当するマザーズを1999年11月に開設したことの社会的意義には、大きなものがあります。NASDAQジャパンの開設への危機感と競争原理に基づいたもので、当時は大変な英断であったと思われます。ちょうど5年が経過した昨日に、この記念イベントが開催されましたが、東証の鶴島啄夫社長のご挨拶の後、来賓のユニチャーム高原慶一朗会長からご祝辞があり16年かけて上場された上場の重みや高志/創造/挑戦/貫徹/感謝/報恩というベンチャー経営者として持つべき経営姿勢に関するアドバイスを頂きました。その後、第一号上場企業としての挨拶を述べる機会を与えられました。ここでは、新興企業向けの直接金融市場を創設された東証殿の英断に対する敬意と、資金を受ける側の新興企業の姿勢としてルールを守ることの重要性を述べさせて頂きました。

2.当社グループの黒字化の意義

 上場当時は、研究開発型ベンチャーとはいえ、売上7億円の技術コンサルティング事業主体の企業だったわけですが、株主の皆様のご支援によってマザーズ市場から調達した約100億円の事業拡大資金をもとに5年間にわたって上場企業にふさわしい「スケールビジネス」を追求してまいりました。ここでいうスケールビジネスとは、労働力を時間単価で売る単品モデルではなく、1つのサービスや製品がN倍化するビジネスモデルのことを意味しております。過去の5年間を振り返ると、「技術の芽をスケールビジネス化する作業」を積み上げてきた歴史であったと思います。技術革新は、技術の芽を産み、個々の技術の芽によって、対象となる顧客と適した課金モデルが異なるわけですが、研究開発力の次に来るのがビジネスモデルの創造力と執務能力であり、これらの総合力が企業価値として評価されることになると思われます。当社グループにおいての最初のスケールビジネスモデルは、BBTowerであり、第2のモデルは、IRIユビテックであります。また、第3のモデルは、IRIコミュニケーションズに集約したところであります。

 日本には、情報流通型ベンチャー企業の評価は高まっていますが、当社のような研究開発型ベンチャー企業の成長は、始まったばかりで、アメリカと比較すると、まだまだ少ないのが実状です。これは、投資資金をもとに技術開発を行い、事業化、黒字化するまでにある程度の時間を要するためですが、日本が先進資本主義社会として発展するために、当社には、マザーズ第1号上場企業として、成功例を作る社会的責任があると思っております。この意味において、上場は通過点であり、成長の起点に立ったに過ぎません。社会に必要とされていること、すなわち顧客が増え売上が拡大すること、次に利益を産むまで発展する、という一連の起業と成長過程の中で、このたび、平成17年6月期第1四半期決算において営業利益・経常利益・当期利益の完全黒字化を達成できたことは、この社会的責任を果たす第一歩を踏み出したと考えております。東証マザース開設5周年を節目として、当社グループの連結黒字化は、ほんの一歩に過ぎませんが、これまで私共の企業活動を支えて頂いた株主の皆様に改めて御礼申し上げます。

2004年11月12日
株式会社インターネット総合研究所 代表取締役所長 藤原 洋

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