株主の皆様へ(第37回)
『 グループ成長を牽引するIRI本体による『IPシナジーファイナンス事業TM』の始動 』
~ "ジュリアーニ"を株主として迎えての世界的視野での「産業のIP化」事業 ~
藤原 洋
2004年11月15日の取締役会は、緊張感と期待感が漂う、明らかにフェーズの変化を感じさせるものとなりました。上場後5年目、第一四半期黒字化の達成感に浸る間もなく、前週に行った決算説明会後急増する機関投資家の方々とのIR機会、これに伴うIRI本体業務の繁忙化は、グループの活性化を反映したものと考えております。このような経営環境の変化の中で、今回の取締役会決議事項は、「各グループ企業の本業」の黒字化努力に応えるべく、「本業の成長」を支援する、「IRI本体が行う本業」の定義と次なる挑戦を意味しております。IRI本体の取締役会は、持株会社的専任役員、各グループ企業の代表役員、および社外役員から構成されていますが、今回は、取締役がそれぞれの立場で議論し決定した"ジュリアーニ"との連携に基づく『IPシナジーファイナンス事業TM』始動の背景と今後の展望について述べさせて頂きます。
1.今回の決定に基づく株主構成の変化
"ジュリアーニ"(ジュリアーニ・パートナーズ/セイジ・キャピタル・グロース)と資本業務提携に基づき45億円の転換社債型新株予約権付社債を発行したことにより、"ジュリアーニ"が、国際戦略パートナーとして安定的上位株主となることを意味しています。今回、"ジュリアーニ"を株主として迎えたことには、大きな意義があると思っております。
企業は、株主のものであると同時に、株主構成が、「企業の性格」を決定していくものと思われます。私は、株主の代表として、創業時から一貫して株主構成には、配慮してまいりました。創業当初は、上場はおろか離陸できるかどうかのリスクの高い状況だったので、創業メンバーと起業精神を応援してくれた大学の先生方だけに限定しました。小規模ながら、何とか離陸できたので、次に当社のIP技術を必要として頂ける企業に株主になって頂きました。具体的には、各産業分野の代表として、キヤノン、ヤフー、住友商事、NTTドコモ、ソフトバンクの各社ですが、これは、あらゆる産業にIP技術を適用していくというビジョンに基づくもので、この上場前の企業株主の皆様との多くの共同事業が、現在の当社グループの企業力の源泉となっています。上場後、住友商事殿とNTTドコモ殿は、各社固有の資金需要、海外での投資損失などの事情から、数年前に段階的に市場で売却されましたが、現在も共同事業の規模は、上場以前と比べて大きく拡大しております。その後、お陰様で株主数は、急増していますが、株主総会や決算説明会でお会いする当社株主の皆様は、技術革新や社会の変化に対して高い関心と品格をお持ちの方々であり、経営姿勢について、いつも教えられることが多く、最も重要な対話の場にさせて頂いております。また、私は、株主の皆様から経営を任されてはおりますが、創業時から、圧倒的な個人持株数で企業を支配することのないように心がけてきました。それは、当然、業態によってはオーナー型経営に向く事業もありますが、当社のようなインターネット技術に関わる研究開発型企業には、オーナー型経営よりもリーダーシップ型経営が適切だと考えてきたからです。
さて、今回、新たに株主として迎える"ジュリアーニ"は、前ニューヨーク市長であるルドルフ・ジュリアーニ氏率いる投資会社で、投資事業の対象となる国家、地域の産業発展を目的とした、成長分野へのコンサルティングと戦略的投資事業におけるリーディング・カンパニーです。ニューヨーク市長を1993年から2 期務めたジュリアーニ氏は、検事総長などを経て、強い正義感と自信のアイデアとリーダーシップによって、ニューヨーク市の犯罪発生率57%減、生活保護該当者数の半減などを達成しました。また、9.11テロによって壊滅したグラウンドゼロでは、多くのボランティアと共に不眠不休で働きましたが、彼は、人の命を尊重することが最も重要であり、企業が問題を抱えたときにもそれは同じだとしています。また、市財政の建て直しは未知の仕事だったが、チームをつくり、弱点を補ってくれるスタッフを配置すること、解決策は必ず見つかるというという楽観主義と、万全の準備を怠らないことの両方が必要だと考えているとのことでした。この強力なリーダーシップが、次期大統領候補の筆頭に上がっている所以だと思われます。今回、ジュリアーニ氏からの直接のコンタクトによって、ビジョンを共有できる当社にふさわしい株主として迎えることは、大きな意義があることだと思っております。
2.『IPシナジーファイナンス事業TM』の実際
IRI本体は、今回45億円の資金調達と共に、子会社IRI-FTを通じて当初100億円の投資ファンド(出資者は、IRIと"ジュリアーニ"の2社)を設立しました。IRIは、これらの資金をもとに、主として海外企業の買収と資本業務提携を行います。"ジュリアーニ"は、欧米を中心とした、戦略的なプライベート・エクイティ・ファンドを管理する大手投資会社ですが、当社は、これらの強力なネットワークを活用して、先進的な技術を有する海外のIT企業をIRIグループ並びに当社投資企業へ繋げることによりさらなる技術力の強化と競争優位を維持します。IP(インターネット・プロトコル)は、21世紀の産業、社会、文化を革新するコアテクノロジーであると考えられます。IRIグループは、このIP技術に特化した事業展開を行ってきました。そこで、IRI本体の資金を使い、子会社への資本投下と企業買収によって、グループ企業価値の増大を図ります。また、IRI-FTファンドを用いて、国内外の産業界との資本業務提携を行います。具体的には、ファンドの投資先への所定の経営参画を行い、IRIグループの総力を結集したIPソリューションの提供と研究開発受託を行います。この結果、IRIグループには、以下の営業収益が加算されることになります。
[1] | IRI本体へのIRI-FTを通じたIRI-FTファンドのファンド管理収入(100億円でのスタート当初2億円/年ですが、順次拡大していく所存であります) |
[2] | IRI本体への投資先企業価値増大に伴うキャピタルゲインの成功報酬収入 |
[3] | IRI本体への投資先企業からのIPソリューション提供/研究開発受託の主契約収入 |
[4] | IRI各グループ企業へのIRI本体を通じたIPソリューション提供および研究開発受託収入 |
この4つの営業収入を得る事業が、 "IPシナジーファイナンスTM"事業で、パートナー企業群(主として上場企業)への戦略的投資と共にIRIグループの有する革新的なIPテクノロジー・ソリューションを提供し、投資先の経営刷新と企業価値向上を支援する事業であります。当社はこれまで、当社グループのコアコンピタンスであるIP(インターネット・プロトコル)技術を、主として通信事業者とコンテンツ事業者に提供する、技術支援事業を行ってまいりました。しかしながら、最近では、ブロードバンドとモバイル・ネットワークの急速な発展によって、製造、流通、医療、教育など広範囲にわたる産業分野において、ユビキタスIPネットワーク技術の導入による事業構造の転換が要求されております。この新たな産業トレンドは、ブロードバンドとモバイル・ネットワークの普及が著しい日本をはじめとする先進アジア地域を起点とするグローバルトレンドとなることは、確実と考えられます。そこで、今回の全く新たな"IPシナジーファイナンスTM"事業による機動的な投資体制を整え、当社の海外展開を視野に入れた1000億円企業グループを目指す事業展開を推進してまいります。
上場後5年を経過し、このような強力な株主を迎えるまで私共の企業活動を支えて頂いた株主の皆様に改めて御礼申し上げます。

2004年11月18日
株式会社インターネット総合研究所 代表取締役所長 藤原 洋