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所長コラム

株主の皆様へ(第38回)

『 BBTowerの新データセンター天王洲サイト開設の意義 』
~ 大手町サイト完売とブロードバンド配信センター事業基盤整備が完了 ~

藤原 洋

 2004年もあと1ヶ月を残すだけとなりましたが、株主の皆様は、今年の総仕上げの月を迎えてご多忙のことと存じます。さて、当社では、あの決断から3年を経過し、グループ成長の最初のコアである株式会社ブロードバンドタワー(BBTower)が、11月より東京都品川区に当社のデータセンターとして大手町に続く第2拠点「天王洲サイト」をオープン致しました。今回は、この新サイト開設の意義について述べさせて頂きます。

1.生みの苦しみからBBTowerの誕生まで

 2000年2月、当社が11%を出資したグローバルセンター・ジャパン株式会社(GCTR)は、インターネットデータセンター(iDC)の元祖である米グローバルセンター社(1995年設立、その後米グローバルクッロシング社からエクソダス社が買収)の日本法人として設立されました。IRIは、当時は、資金が乏しく、GCTR社へのマイノリティ出資とサーバとネットワークの運用受託(アウトソーシング)事業として参入しました。その約2年後、米国ネットバブル崩壊によるパートナー企業の経営不振から、2001年12月に大きな岐路に立たされました。当社が、事業継承しなければ、GCTRは、クローズされる。しかし、月2億円の赤字を出していた事業を継承できるのか?それともリスクヘッジをして撤退するのか?経営陣でも意見が分かれました。また、当時は、最大手のエクソダス社が経営破綻し、米国で生まれたiDC事業は、困難な事業であるという風潮が漂い始めた時期でもありました。
 何度も、内部で議論を繰り返しましたが、意見がまとまらないまま、2001年12月末私から役員会に緊急動議を提出することとしました。当然、この困難で高度な経営判断は、社内外の各役員に委ねられ、賛否が分かれました。当時多くの担当業務をこなしていた大和田廣樹取締役(現BBTower社長)の同事業専任化と経営へのコミットメントもあり、役員会決定は、撤退ではなく、買収の道を選択することでした。この結果、2002年4月、減増資により累損解消と共に出資比率を60%以上に高め、アウトソーシングから事業主体へと転換、株式会社ブロードバンドタワーへと商号変更しました。この"ブロードバンドタワーTM"という社名は、来るべきブロードバンド時代のコンテンツ配信拠点にするという想い(ブロードバンド上の東京タワーの役割を担う)を込めて命名したものでした。当時のブロードバンド加入世帯数は、数百万に留まっていましたが、BBTowerの始動直後には、超低価格Yahoo!BBのサービス開始の影響が現れ始め、ブロードバンドユーザー急増の兆しが見えてきました。
 この頃から、ブロードバンドとモバイルは、インターネットの普及と共にITビジネス環境を一新したと言えます。20世紀末まで、ITビジネスは全て、米国生まれ米国育ちでした。すなわち技術も市場も米国をフォローしていれば良かったわけですが、特に、21世紀になって、ブロードバンドの市場性に関しては、ADSLに関わる日米の社会環境の相違が顕著に現れてきました。米国では、ノースポイント社、リズム社、コーバット社等のADSL専業キャリアが経営破綻したのに対し、日本ではソフトバンクBB、イーアクセス、アッカ等のADSLを主体とする新興通信事業者が、順調に成長してきました。この明暗を分けた最大要因は、重要な高速通信指標としての、回線の集約設備を収納する電話局から半径2km以内の人口密度であります。電話回線上の信号レベルは、周波数f(伝送速度と等価)とすると√fに比例して減衰する特性があるため、日本でのADSLビジネス環境は、米国と比較して1桁以上優れているという側面があります。要は、日本のADSL通信事業は、設備投資効率が高く、高速の接続環境を利用者に提供できるわけです。このため、日本では、ブロードバンド化が2002年末頃から加速し、利用者一人当たりの利用帯域(伝送速度)は、米国よりも1桁以上大きくなるまでになりました。BBTowerは、岐路からの決断から間もなく3年を迎えますが、まさにブロードバンド市場爆発前夜の新たな旅立ちだったのでした。

2.名実ともにブロードバンドタワーへ

 このような世界最高速、最低価格のブロードバンド大国日本においては、ウェブサイトの1日当り平均ページビューが、今も尚、急増しています。検索エンジンとオークションサイトの市場シェアにおいて、世界的にも業界ダントツのウェブサイトを運営するのが、ヤフー株式会社です。BBTowerは、ヤフー殿の1日10億ページビューを超える超高頻度アクセスと膨大なトラフィックを発生するウェブサーバ群を運用する、極めて大きな社会的役割を担うiDCとなりました。顧客側の視点では、最大トラフィックを発生するiDCのメリットとしては、通信事業者からの接続帯域を大量導入できるため、各顧客への帯域コストを低く抑えること、また、電源、ラックマウント機材、ネットワーク機器などの大量導入が可能となり、iDCインフラ設備のコストダウン等があります。また、当社側の視点としては、世界にも他に類を見ない高トラフィックを発生するiDCを安定運用することで、サーバとネットワークの実運用技術を蓄積し、顧客からの継続受注を得るための信頼を獲得することができました。さて、データセンターには、1)iDC型、2)通信キャリア型(通信回線顧客対象の)データセンター、3)基幹業務系アウトソーシング型に大別されます。BBTowerは、日本の世界最先端のブロードバンド環境を活かし、ヤフー殿はじめ超優良ウェブサイト運営事業者を顧客として獲得できたことで、専業最大手のiDC事業者になるまでになりました。
 しかしながら、BBTowerは、このような世界最大規模のトラフィックを扱うデータセンター「大手町サイト」において、好調な販売が続いていることから、現在の稼働率は74%に達しており、現在の受注状況から現用設備では顧客需要に対応できない状況となってまいりました。そこで、このたび、ブロードバンドのさらなる普及と共に、今後も継続して増加が予想されるデータセンター需要に対応すべく、「天王洲サイト」を開設することと致しました。この新たな「天王洲サイト」は、都心立地を条件に多くの候補地から選定したものです。すなわち、耐震性に優れた堅牢な建物に立地し、潤沢な電源環境とそれを賄える空調設備を保有したファシリティ環境を提供可能であるという点が重要です。当然、ウェブサイト運営事業者にとっての三大要件である、1)通信回線(キャリア)選択に制限のない「キャリアニュートラル性」、2)高速・広帯域の「インターネット接続性」の、3)大容量トラフィック対応「バックボーン運用の安定性」を大手町サイトと相互接続することで実現します。新サイトは、当初、70ラック規模でスタートし、2005年4月には、約400ラック規模まで拡張する予定です。本計画達成時には、現在運用規模の約40%増への対応に相当しますが、当サイトは、さらなる規模拡張性を備えた設備となっております。この意味で、新サイトの開設の意義は、大手町サイトの完売と、さらなる事業成長性の基盤整備が完了したことにあります。
 BBTowerは、このように定評あるデータセンター事業のほか、2003年秋からネットシネマをはじめとする、ブロードバンドコンテンツ事業者との協業モデルによる企画・制作、配信事業を展開しており、文字通りブロードバンドコンテンツの配信センターとして、名実共に、快適なインターネット環境提供に努めて参ります。

【天王洲サイトの主なスペック】
◇ファシリティ
 ・建  物 : 耐震SRC構造
 ・消火設備 : IG-55ガス(窒素+アルゴンガス)
 ・空調方式 : 空冷チラー方式 床吹き上げ空調
 ・フリーアクセスフロア高 : 400mm
 ・床耐荷重 : 床スラブ1,500kg/m2
 ・室  温 : 24℃±2℃ 湿度:55%±10%
 ・受電設備 : 特高22kV、ネットワーク受電
 ・電  源 : 分電盤までの無停電電源(含む 発電機、UPS)

◇セキュリティ
 ・高度セキュリティーシステム
 (24時間365日体制による有人監視、非接触ICカード、追尾式監視カメラ)

◇19インチラック
 ・W:700 × D:900 × H:2,200 mm
 ・高さ:46U
 ・AC100V20A×2/ラック
 ・二重化電源
 ・前背面扉(個別錠付)

 生みの苦しみからの一大経営判断から約3年を経過した今日、BBTowerは、グループ成長のコアとして連結黒字化の原動力となるだけでなく、単独上場が可能な段階にまで成長することができました。このように強力なグループ企業の成長を支えて頂いた株主の皆様に改めて御礼申し上げます。

2004年12月2日
株式会社インターネット総合研究所 代表取締役所長 藤原 洋

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