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所長コラム

株主の皆様へ(第40回)

『 新年のご挨拶 』

藤原 洋

 新年あけましておめでとうございます。

 今年は、久々に米国での始動となりました。2005年は、ユビキタス元年になると予想されることから、「組込み型ユビキタスネットワーク訪米調査団」の団長を拝命し、創業以来初めてCES(コンシューマ・エレクトロニクスショー)への参加と同技術に関わるシリコンバレーの企業訪問を行ってまいりました。最先端技術に関わる企業の人々との直接的な意見交換もさることながら、アドバイザーとして同行頂いたカーネギーメロン大学での研究業績など世界の徳田英幸慶應義塾教授と、日本におけるユビキタスネットワーク業界に関わる20名弱の若手技術者、ビジネスマンとの約1週間強におよぶ交流は、ユビキタス元年となる2005年を始動する上での貴重な時間となりました。
それでは、昨年の新年のご挨拶で掲げた4つのビジョンのレビュー、米国出張レポート、および今年のビジョンについて述べさせて頂きます。

1.2004年ビジョンのレビュー

 第1のIRIユビキタス研究所をIRIグループ全体の共同利用研究開発機関として位置づけ「IPによるリアルスペース創生」を産業としてIRIグループが担っていくビジョンと、第3の「IPプラットフォーム事業」についてIRIユビキタス研究所との連携を強化し連結子会社のタウ技研を中心に展開するというビジョンについては、同研究所の位置づけを維持・発展させ、株式会社IRIユビテック(旧タウ技研)に移管し、さらに具体的な研究開発型事業を開始しました。同社は、昨年役員改選を行い、前述の徳田教授と後述のIP Infusionの石黒氏を社外役員に招聘し同技術リーディングエッジの一角を担うと共に、初のユビキタス特化型企業として株式上場準備を進めております。
 第2のネットワーク・サービスのコア技術を提供する「IPネットワーク事業」については、連結子会社であるBBTower、BBX、ICOの3社の個別強化を進めた上で、「強い企業同士の連携」を更に深めるというビジョンについては、BBTower、およびその他の2社とIRI本体事業を統合したIRIコミュニケーションズの2社に集約しました。その先陣を切って、専業iDC最大手に成長したBBTowerが、株式上場準備を進めております。また、有力通信事業者・エンタープライズIT部門を顧客とするIRIコミュニケーションズは、年間現在顧客数の1桁増を施策として取り組んでおり、事業規模もグループ内最大規模となっております。
 第4の強い企業グループの構造的創生への挑戦というビジョンについては、3本以上の事業の柱を作ることと、国際化であるという経営方針の下、「IPネットワーク事業」と「IPプラットフォーム事業」に続く第三の柱として、医療分野にフォーカスし、昨年10月ファイバーテックのグループ入りによって、その準備を行いました。また、国際化については、ジュリアーニ・パートナーズ/セイジキャプタルグロースとの資本業務提携を行い、その準備を行うことができました。

2.米国出張レポート

 新年早々の米国での始動は、創業以来初めてのことでしたが、新春のラスベガスとシリコンバレーは、例年になく冬の嵐となり、業界の地殻変動を予感させるものでした。地殻変動に相当する業界変化は、ベンチャー企業にとっては、またとないビジネスチャンスの到来を意味し、やはり興奮する一年は、久々の米国スタートからという感じがしております。

 ここ四半世紀の実体験として、コンピュータ・通信・放送・家電という四分野の欧米の世界最大展示会を見てきました。そこへの参加を通じて感じたことは、波動的な技術革新による市場変化が、景気変動を起こし、人々(特に日本人)は、一喜一憂してきたということです。ところで、今回のCES参加を通じて、同分野に2005年からかなり興奮的なことが起こりそうな気配がありました。これまで、家電分野は、長い冬の時代を経験し、いつもコンピュータ分野やネットワーク分野の急成長ぶりを横目で眺めてきた感がありましたが、いよいよ波が来たという印象がありました。間違いなくこの波動の源泉は、コンピュータとネットワーク技術ですが、分野は、家電分野です。4年に一度の通信オリンピックTelecom2003の衰退や2004年のComdex Fall2004の中止に対して、前年比大幅増の14万人以上の参加者と2400社以上の出展を集めたCESには、従来の家電業界のイメージを一新する、マイクロソフト・インテル・HPなどの推進するメディアセンターの登場、高品質をアピールした日本メーカーのデジタル家電機器、200Mbpsも射程圏に入った高速PLC(電力線搬送)、および102インチと71インチの巨大プラズマTVを公開したサムソン、LGなど韓国企業の急成長、そして、中国企業群の元気よさなどが目を引き、同業界が当分の間、経済発展の要となる印象を受けました。また、同業界にとっては、マイクロソフトもインテルも外来企業であり、彼らの別業界での成功度が大きければ大きいほど、かえって参入障壁は高くなるという側面もあり、情報化とネットワーク化が進む同業界の市場の群雄割拠的活性化が予感されました。

 シリコンバレーでは、何らかの局面で当社の事業活動に関わっている企業群を訪問しました。世界初のオープンソース・ルータエンジン・モジュールを1996年に開発した石黒邦宏氏と吉川欣也氏が設立したIP Infusion 社、組込み型LinuxではNo.1の実績を誇るMontavista Software 社、通信キャリア研究所の中でユニークなインターネットや無線LAN関連技術を主な研究ドメインとするNTTドコモ米国通信研究所、およびカリフォルニア大学バークレー校が進めてきたスマートダスト計画のスピンオフカンパニーであるCrossbow Technologies社を訪れ、最先端技術とそのビジネスに関わる人々と大変有意義な議論を行うことができました。

 議論を通じて感じたことは、2000年から2001年のネットバブル崩壊後、日本企業のシリコンバレー駐在員は、25000人から5000人へと激減し、また、シリコンバレーのオフィススペースも3分の1は、空室状態であるとのことでしたが、本物の技術をもった企業だけが生き残っているということでした。シリコンバレーでは、技術もなくアイデアだけで投資家から資金調達を行い、上場だけを目的としていた企業は消えていったとのこでした。今回訪問した企業は、ユビキタスネットワークに関わり、ドットコム型のサービス企業とは異なり、利益を産むのに3年~5年はかかるビジネスですが、長期ビジョンをしっかりともち、1つ1つの技術を深く、じっくりと追求している企業ばかりで、企業文化を共有できるという印象をもちました。ここで会った何人かの人々とは、本年秋に初めて日本で開催されるユビキタスコンピューティングの国際学会Ubicomp2005(大会委員長:徳田英幸教授、私と荻野司IRIユビテック社長も実行委員)で、また会いましょうということになりました。

3.新年を迎えての2005年ビジョン

 CES2005レポートのところで述べたように、2005年は、家電業界にデジタル化とネットワーク化が一斉に押し寄せる波動の始まりの年だと思われます。当社グループは、コンピュータ業界、通信ネットワーク業界に中立的に事業展開を行ってきました。また、IRIユビテックは、28年間にわたって家電業界におけるシステム部品ファブレスメーカーとして活動してまいりました。この記念すべき波動開始の年に、どの家電業界の企業よりもコンピュータやネットワークにコミットしてきた企業グループとして、このコミットを家電業界のために貢献していきたいという強い使命感を覚えました。そして、この新たなデジタルネットワーク家電産業は、当社グループの重要顧客であるコンテンツ業界、コンピュータ業界、およびネットワーク業界にとっても大きなビジネスチャンスになるものと思われます。このような背景の下、以下のような2005年ビジョンを掲げて年始のご挨拶とさせて頂きます。

 第1に、IRIユビテックをコアとした「デジタルネットワーク家電産業」という新産業分野創生に取り組みたいと思います。このためには、これまで、IRIグループが業界横断的に活動してきたグループの総合力を発揮したいと考えております。その最初の挑戦が、初のユビキタス特化型企業として株式上場を果たすことであると認識しております。そのことで、これまで取り組んできたIPプラットフォーム事業の集大成としての骨格ができることになるものと考えております。

 第2に、BBTowerをコアとした「ブロードバンド・コンテンツ産業」という新産業分野創生に取り組みたいと思います。このためには、ヤフー殿と共にBBTowerが、取り組んできた専業iDC最大手への成長の軌跡を振り返り、インターネット上において高信頼の運用技術を更に重視しトラフィックを安全に処理することの重要性を再認識することであります。次に、未だ確立していないブロードバンド・コンテンツ業界が集まってくる場としてのBBTowerの社会的役割を確立することであります。その最初の挑戦が、専業iDC最大手企業としての財務の健全性とブロードバンド・コンテンツ業界の集約拠点としての成長性を評価された上での株式上場であると考えております。

 第3に、IRI-Comなどグループ総力をあげての「安全+環境保全産業」の創生であります。20世紀は、生産拡大による経済発展のための産業が主役の世紀でした。しかし、21世紀は、安全と環境保全のための産業を振興し、新たな経済を創る時代であると考えられます。このためには、IRI-Comによる個人情報保護など情報セキュリティの一層の強化と高齢者向けITサービス、ファイバーテックによる人体に優しい医療機器、昨年末発表したIRI-CTによるCO2削減目的の新世代e燃費、そして、2月2日にジュリアーニ氏を迎えて行うシンポジウムで議論する物理セキュリティも含めたHomeland Security(国土安全保障)技術の確立が極めて重要であります。今年は、グループとしての「安全+環境保全産業」の提唱を具体的に行う年にしたいと考えております。

 旧年中は、株主の皆様のご支援により、連結黒字化と国際企業へステップアップするきっかけをつかむことができました。今年は、インターネットが、興味深い対象としての技術から、当社の事業展開によって真の意味での産業創生ための技術であることを実証する年とすることを宣言して、新年のメッセージとさせて頂きます。

2005年1月14日
株式会社インターネット総合研究所 代表取締役所長 藤原 洋

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