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所長コラム

株主の皆様へ(第42回)

『 独立事業会社へと発展するBBTowerとIRIユビテック 』
~ 連邦型独立経営による成長を目指すIRIグループの桜前線 ~

藤原 洋

 2005年の春も桜満開の季節となりました。株主の皆様におかれましては、これから始まる一年で最も過ごし易い時期を迎え、新年度や新学期に思う心地よい新たな希望と緊張感をお持ちのこととお察し致します。私も最近急速に増え始めた機関投資家の方々向けのIR、公共案件に関わる産学共同での研究開発計画の審査対応、その他様々の(?)審査対応ためのプレゼンテーションに心地よい緊張感と期待感と共に充実した日々を過ごしております。とりわけ、IRIグループの中でも、今年の桜の季節に相応しいタイミングで、独自のブランドを確立し、自律的成長を開始した株式会社ブロードバンドタワー(BBTower)と株式会社IRIユビテック(ユビテック)の近況についてご報告させて頂きます。

1.IRIグループが進める連邦型独立経営とは?

 BBTower とユビテックは、IRIグループの日本社会における役割を果たすために考案した「連邦型独立経営」の最初の実現モデルです。IRIグループの役割は、ビジネスモデルは異なりますが、米国におけるシスコシステムズ社の役割に類似したものであると考えております。即ち、企業顧客にとって、頼りになる「IPテクノロジー・パートナー」であるという役割です。日本国内において、インターネット分野の新興サービス企業には、ヤフー(株)を筆頭に、多くの優れた企業が存在しますが、同分野の新興テクノロジー企業は、極めて少ないのが実状です。これは、「マイクロエレクトロニクス革命」、「インターネット革命」というIT分野における2つの技術革新が、アメリカで起こったことに起因すると思われますが、ブロードバンドとモバイルを基本とする「ユビキタス革命」は、日本発の技術革新を産む可能性があり、この一翼を担う新興企業となることが当社のミッションであると考えております。
 当社グループの顧客は、最先端技術を必要とする超優良企業であるため、我々自身、どのIT関連企業よりも、最先端技術が必要とされる環境に置かれています。そこで、この環境に適した「連邦型独立経営」を実践することと致しました。「連邦型独立経営」とは、急速な技術革新への対応を可能とするために、適切な技術分野(事業分野)に分割し、専門度の高い技術集団が自然増殖する成長メカニズムをもつ、以下のような特徴をもった企業グループの経営方式です。

[1] 自立分散型組織運営
 IPネットワークと類似した組織構成とし、各グループ企業は、IRI本体と他のグループ企業とのコミュニケーションをとりつつ、担当事業分野の事業活動については、自主独立の迅速な意志決定を行います。アメリカ合衆国の連邦政府(IRI本体)と州政府(各グループ企業)モデルに相当します。

[2] IRI本体の役割
 主として、財務、事業開発、コーポレートガバナンスの3つの役割があります。
具体的には、グループ企業との密なコミュニケーションの下、グループ全体の経営ビジョンと経営方針の策定、各グループ企業間の連携促進と担当事業範囲の調整を行います。財務として、実際の事業を行うグループ企業の要請に応じて、資金的支援を行います。事業開発としては、各グループ企業に対して、営業的支援(顧客紹介など)、人的支援を行い、新たに必要と思われる事業を企画し、新事業分野を創生します。また、コーポレートガバナンスとしては、当社をはじめとする各グループ企業において法令遵守の視点から意識をあわせ、IRIグループのガバナンスが有効に機能する体制強化に取り組んでおります。

[3] 各グループ企業の役割
 IPネットワークと類似した組織構成とし、各グループ企業は、IRI本体と他のグループ企業とのコミュニケーションをとりつつ、担当事業分野の事業活動については、自主独立の迅速な意志決定を行います。アメリカ合衆国の連邦政府(IRI本体)と州政府(各グループ企業)モデルに相当します。

2.ブロードバンド・コンテンツ配信拠点のコアに成長したBBTower

 BBTowerの前身であるGCTR(グローバルセンタージャパン(株))は、2000年2月、米アジアグローバルクロッシング社(AGC社)89%とIRI11%で、出資比率に応じて、両社で25億円の出資を行いスタートしました(その後増資)。米国のネットバブル崩壊後の2002年4月IRIの連結子会社として社名をBBTower((株)ブロードバンドタワー)に変更して新たにスタートしました。BBTowerには、ブロードバンドのインフラ環境における東京タワーのような役割を果たすという意味が込められていますが、日本のブロードバンド環境は、Yahoo!BBのサービスイン以来、日本は、米国はじめ世界でも突出した、急速な低価格化と高速化が進みました。このことが、結果的には、コンテンツ事業者のWebサーバへのアクセスの急増要因となっています。今や、インターネット上の国民的メディアとなった最大手のヤフー(株)のアクセスは、10億ページビュー/日を超えており、このページビューは、圧倒的な世界一となっています。次に、アクセスの多いコンテンツ事業者は、ネット証券事業者です。そこで2003年に、BBTowerでは、ソフトバンクインベストメント(株)との戦略的資本業務提携を行い、最大アクセス数を誇るイートレード証券のWebサーバ群の誘致を開始しました。このような人気コンテンツのページビューの増加は、インターネット利用者の利用帯域の増加に起因しますが、ページビューの増大とリッチコンテンツ(動画や高精細画像を含む)の増大は、Webサーバの増設ニーズをさらに加速しており、米国にもないBBTowerならではの、日本型(アジア型)「ブロードバンド対応iDC事業」の成長基盤となっています。
 BBTowerでは、さらにこの世界最大のブロードバンドコンテンツ発信拠点のメリットを活かした、新たなビジネスモデルとして「ネットシネマ事業」を考案しました。これは、ブロードバンド接続環境を熟知したBBTowerが、各コンテンツ産業分野のメジャー・プレイヤーとがタイアップして制作から配信を行うと共に、さらにはネット配信視聴者からの反応をもとにした様々なマーケティング情報の活用事業です。その典型例となるドキュメンタリー『ニッポンの挑戦シリーズ~第一弾インターネットの夜明け~』【企画・制作 BBTower/ヤフー 、制作協力 NHKエンタープライズ】の試写会・記者発表会が4月7日に慶應義塾大学本部にて開催されました。この「ネットシネマ事業」は、全く新しいブロードバンドコンテンツビジネスモデルであり、同社の「ブロードバンド対応iDC事業」と相乗効果を産むと共に、次なる成長のコアとなるもので、大和田廣樹社長自らが発案し主導している事業であります(関連記事は以下を参照下さい)。

■日経IT
http://it.nikkei.co.jp/it/news/topics.cfm?i=20050407zn003zn&from=bottom

■アスキー24
http://ascii24.com/news/i/topi/article/2005/04/07/655242-000.html

■INTERNET Watch
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2005/04/07/7186.html

■毎日インタラクティブ(MSN)
http://www.mainichi-msn.co.jp/it/network/news/20050407org00m300090000c.html

3.ユビキタス組込み型ソフトウェアエンジン供給のコアに成長したユビテック

 ユビテックの前身であるタウ技研(株)は、1977年設立の非常に伝統ある電子機器開発企業で、オフィスコンピュータやICE(インサーキット・エミュレータ)など、マイクロエレクトロニクス革命の時期に、「自社開発と受託開発に基づく工場をもたない自社ブランド製品も手がける電子機器メーカー」として一世を風靡しました。その後、エレクトロニクス業界では、大企業による市場淘汰が進み、同社は、1986年に新日鉄グループ入りを契機に、リスクの低い単純な電子機器受託製造事業者(いわゆるEMS:Electronics Manufacturing Service)へと業容変更を行いました。この間、同社は、一貫して、「受託生産に基づく工場をもたない他者ブランド製品を手がける電子機器メーカー」として、90年代に日本経済が低迷する中で、ローリスク・ローリターンの黒字体質を定着させ、強固な顧客基盤を確立し、安定成長軌道に乗ってきました。
 時は流れ、2001年6月、友好的M&Aによって、米国発インターネット革命の流れを受けて日本発ユビキタス革命の担い手となるべく、IRIグループ入りを果たしました。その後、黒字体質を作り上げた経営陣を維持・発展させ急速な技術革新に対応可能な、グループ連携を行える体制を整備してきました。そして、2003年~2004年にかけて、IRIグループにおけるユビキタス技術の中心として位置づけ、段階的な経営陣の若返りと伝統を活かしつつ、構造改革を行ってきました。この一連の構造改革の中での重要事項は、キヤノン(株)出身の荻野司氏のユビテックCEO就任、一部のIRIグループ内ネットワークエンジニアのユビテックへの転籍、およびIRIユビキタス研究所のユビテックへの移管であります。キヤノン(株)は、IRIの創業間もないころからの株主であり、当社が目標とする、優れた財務体質と成長性を兼ね備えた、日本を代表する研究開発型テクノロジー企業ですが、荻野社長による強力なリーダーシップの下、キヤノン流の構造改革を進める中で、「共同研究開発に基づく他社ブランド製品向けの組込み型ソフトウェアエンジンメーカー」へとビジネスモデルの転換を行ってきました。その結果でき上がったのが、以下の3つのプロセスによる複合ビジネスモデルです。

[1] 顧客との共同研究プロセス:【ユビキタス研究所の移管事業】
[2] 上記[1]に基づく共同開発プロセス:【新規組織改変による開発特化型事業】
[3] 上記[2]に基づく受託生産プロセス(EMS):【従来からの事業】

 この構造改革の結果、従来型の低利益率である単純EMS事業を終端させ、研究開発型組込み型ソフトウェアエンジン事業に注力したため、今期は、一時的に減収増益となりますが、来期からは、新ビジネスモデルに基づく新たな増収増益型の成長フェーズに入る見込みです。

 既に、中間決算では、売上総利益率は21.4%と前期の14.0%と比べて大きく改善させましたが、ユビテックは、2005年4月6日付の荻野氏のIRI取締役退任によるユビテック社長専任によって次なる成長フェーズに入りました。

プレスリリース

■日本経済新聞4月8日企業人事欄

 新経営体制の下、ユビテックは、以下の3つの技術分野において、最終製品を提供するパートナー企業にとって、激しい国際競争の中で勝ち抜くための「頼りになるテクノロジー・パートナー」へと発展してまいります。

[1] IPv6をはじめとする組込み型ネットワーク制御用ソフトウェア技術
[2] 組込み型OS/APIソフトウェア技術
[3] 組込み型映像処理/画像処理技術

 以上、BBTowerとユビテックの近況報告をさせて頂いたように、IRIグループもこの2社が独立事業として成長し、新しい春を迎えようとしております。今後は、株主の皆様と共に、もうそこまで来ている新しい季節へ向かって、大きく前進したいと考えておりますので、IRIブランドと共に、BBTowerブランド、ユビテックブランドも併せてご支援の程宜しくお願い申し上げます。

2005年4月11日
株式会社インターネット総合研究所 代表取締役所長 藤原 洋

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