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所長コラム

株主の皆様へ(第47回)

『 叱咤激励の日々を通じて 』
~業績予想修正発表後のご報告とIRI-Comの事業展開について~

藤原 洋

 6月20日午後に発表させて頂いた連結業績予想修正につきましては、20日夕刻から21日午前中に多くの個人株主の皆様から問い合わせを頂きました。また、機関投資家の方々向けのIR活動を継続する中で、今期の業績予想修正に至った背景と来期見通しに関する質問を頂きました。同時に複数の新規事業を立ち上げる新興企業の経営を任されている中で、業績予想を出す困難さに直面しつつも「計画通りに実行すること」「約束を守ること」のリーガル面、道義面での責任の遂行に、取り組み続けている今日この頃であります。しかしながら、ここ2日間の株主の皆様からのご要望に応えることの緊張感を、ストレスとしてではなくプレッシャーとして受け止めることができましたことを改めて御礼申し上げます。今回は、前回からの連続となりますが、業績予想修正の背景と、株式会社IRIコミュニケーションズ(以下、IRI-Com)の事業展開について述べさせて頂きます。

1.叱咤激励の日々

 連結業績予想修正を出させて頂いた6月20日と21日の2日間は、私にとって忘れられない日々となりました。というのは、広報IR担当を通じてお聞きした株主の皆様のお問合せやご意見が「叱咤激励」に感じられたからです。叱咤激励とは、「大きな声で励ますこと」という意味ですが、お問合せやご意見の内容を確認すればする程、文句ではなく、今のやり方に自信を持て、でもやり方が間違っていればやり方を変えてやってみろ、決して立ち止まることは許さない、という皆様からの声が聞こえたからであります。21日の当社の株式取引の気配は、午前8時台は値幅制限一杯の最低価格での取引を予感させるものでしたが、9時以降は叱咤激励のメッセージが聞こえてくる内容に一転しました。残念ながら株主の皆様から頂いた計画未達成への判定は当然厳しいものでしたが、新興企業にとってポジティブであれネガティブであれ、サプライズは必須ですが、ネガティブはここまでで当面は終了したという確信が持てましたので、今回のご報告を行う決意を新たにした次第であります。

2.IRI-Comとは?

 前回ご報告しました通り、IRIグループは、東証マザーズ上場後、一貫して3本の事業の柱を立てるべく約5年間にわたって先行投資を続けてまいりました。その第一の柱が株式会社IRIユビテック(IRIユビテック)であり、第二の柱は株式会社ブロードバンドタワー(BBTower)です。第三の柱となりつつあるIRI-Comは、今回の業績修正により今期の見込みを売上約80億円/営業利益約1億円へと修正したわけですが、前期の▲6億円から前記2社を上回る収益事業にしようとする目標をもったスタートは、極めて大きな挑戦でした。

 IRI-Comの事業は、MSP(Management Service Provider)事業、VAS(Virtual Access Service)事業、BEX(Broadband Exchange)事業、およびAdNI(Advanced Network Integration)事業という4つの事業を、子会社同士の合併とIRI本体からの会社分割によって統合したものです。以下にIRI-Comの事業内容と歴史についてご説明致します。


[1] MSP事業: 前身は、ルータとサーバから構成されるIPネットワークの24時間運用保守を行う株式会社インターネットシーアンドオーを母体としています。1999年にIRI、日本電話施設株式会社、日本コムシス株式会社、キヤノン株式会社の子会社との合弁会社としてスタート。主要顧客は、JPIX、キヤノングループ他約50社。今期半ばに月次での損益分岐点に到達しました。ビジネスモデルは顧客から月々一定額の運用保守料金を頂くもので、損益分岐点を超えると黒字幅が拡大するモデルです。今期の事業規模は全体の約10%程度の見込みです。

[2] VAS事業:ISP向けダイヤルアップ接続インフラ提供事業で、2004年2月に平成電電株式会社からIRIが買収し、株式分割によりIRI-Comが承継した事業。顧客は、地域ISPを中心に約50社。前期は買収の際に発生した営業権(暖簾代)の償却負担で赤字でしたが、今期は期初から黒字化しております。圧倒的な価格競争力を持っておりますが、今期は、想定していた大手ISP2件の受注を既存のインフラ提供社のポリティカルディスカウントにより直前に失注したことが第一の予想修正の要因となりました。ビジネスモデルは、エンドユーザーがダイヤルアップ接続により支払う料金の一部を相互接続している通信キャリアを通じて頂くもので、レベニューシェアのモデルです。今期の事業規模は全体の約20%程度の見込みです。

[3] BEX事業:ブロードバンド時代のコンテンツ事業者とブロードバンド通信事業者間のトラフィック交換を担う事業で、顧客は、CATV局、コンテンツ事業者など約80社。2000年にスタートしたIRI、日本電気株式会社、松下電器産業株式会社、東京電力株式会社、株式会社NTTデータ、住友商事株式会社の合弁会社である株式会社ブロードバンド・エクスチェンジが母体で、今期後半に月次での損益分岐点に到達しました。この月次黒字化の遅延が第二の予想修正の要因となりました。ビジネスモデルは顧客から月々一定額の接続料金を頂くもので、損益分岐点を超えると黒字幅が拡大するモデルです。今期の事業規模は全体の約20%程度の見込みです。

[4] AdNI事業:前期は、IRI本体で行っていた高度なネットワーク・インテグレーション(NI)事業であり、会社分割によりIRI-Comが承継した事業。特徴的な機器とセキュリティソリューションをコアとしたソリューション事業で、米国シスコ社のルータを主体とした一般的なNIとは異なり、顧客の要請に基づきベンダー中立の立場から、IPネットワーク構築のコンサルティング、ネットワーク機器選定、ネットワーク設計を行うものです。顧客は、通信事業者、一般企業など。本事業はワンショットの労働集約型事業ですが、本事業の顧客に対して上記3つのリピードオーダー型事業の顧客とすることで、4つの事業の相乗効果を発揮することが可能です。なお、今期の事業規模は全体の約50%程度の見込みです。

以上に述べましたように、前期に赤字事業であったMSP、VAS、BEX事業という3つの事業が今期に黒字転換したことは、来期は全4事業が黒字スタートできると共に、今後大きく事業規模を拡大していくことを意味しております。

株主の皆様におかれましては、既に株式上場したIRIユビテックと準備中のBBTowerにつきましてはよくご理解頂いているものとお察し致しますが、今後は、是非IRI-Comの新たな事業展開にご注目頂ければ幸いです。今回は、前回に引き続き業績予想修正の背景とIRI-Comの事業展開内容について詳細な説明をさせて頂きましたが、引き続き変わらぬご支援ご鞭撻の程お願い申し上げます。

2005年6月22日
株式会社インターネット総合研究所 代表取締役所長 藤原 洋

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