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所長コラム

株主の皆様へ(第59回)

当社の創業9周年記念日を迎えて
~10年目に入る今後の展望について~

藤原 洋

 株主の皆様におかれましては、例年に比して穏やかな初冬の中、如何お過ごしでしょうか。本日、これまでの株主の皆様のご支援を賜り、当社は、第9回目の創業記念日を迎えることができました。ここに改めて御礼申し上げます。これからいよいよ10年目に入ります。10年一区切りと言うように、人類が基数基準に10進法を採用してきたことには、合理性があると思われます。10年目に入る当社においても、株主の皆様から、10年でここまでは来た、そしてこれからの先の10年さらにご期待頂けるような企業経営を行っていきたいと考えております。今回のコラムは、業績に関するお話ではなく、当社の創業記念日に想う今後の展望について述べさせて頂きます。

1.これまでの10年とは?

 私自身の約半世紀の人生を振り返りますと、大学で科学者を目指し授業料を払いながら基礎を学び、研究開発技術者として給料をもらいながら実学を学び、ベンチャー企業の経営陣に加わりながら経営の基礎を学び、インターネット時代の到来と共に起業し、今日に至っています。特に、ここ20年を振り返りますと、そこには、産学官連携での研究開発と国際標準化活動に燃焼した10年と、ベンチャー起業に身を投じて株主の皆様から企業経営の厳しさを学び難局を乗り越える力を与えて頂いた10年がありました。

 私の拙い経験ですが、「科学者と技術者」には、自然発生的に「好奇心と探究心」が芽生え、時として、とんでもない「発見と発明」をしてしまうことがあります。そのとんでもない「発見と発明」が、「生活習慣と商習慣」を変え、「制度と法律」を根本的に変えることになります。ここでは、このような「社会の部分的変化」をもたらす、一連の「発見と発明」を「技術革新」と呼び、さらに一連の「技術革新」によってもたらされる「社会の構造的変化」を「産業革命」と呼ぶことにします。この意味において、明らかに「インターネット」は、現代社会の構造を根本的に変える「技術革新」です。そして、その変化は、まだ始まったばかりです。インターネットの本格的商用化が始まって約10年ですが、これまでの10年は、インターネットが社会インフラとなるための序章でした。すなわち、電話のために構築された通信網を使って、何とかインターネットが使えるようになったところです。そして今ようやく、人類は、インターネットに合うように、通信網を作り変える時代を迎えています。欧州を発信源とする、ITU(国際電気通信連合)による IP(Internet Protocol)を基本とした NGN(Next Generation Network)標準化の動きは、その1つの時代表現でもあります。過去の10年は、「インターネットと通信の融合」の10年であったといえます。

 当社は、この技術革新に乗じて創業し、”Everything on IP! and IP on Everything!”(あらゆる産業分野にIP〔インターネット・プロトコル〕を!)を企業理念にIP技術に特化した事業展開を行ってきました。そしてインターネットの商用化約10年の歴史の中で当社グループは、通信事業者の電話事業からインターネットへの移行支援、コンテンツ事業者への情報発信拠点提供、端末メーカーへのIP組込み技術の提供、企業ユーザーへのインターネット活用促進を行うことで、第1期の単体での売上高約1億円から第10期目を迎えた今期の連結売上高約532億円への事業規模を見込んでおります。このことから、株主の皆様から頂いた当社の成長力と共に、10年で500倍以上の企業成長をもたらすインターネット革命のすさまじさを改めて実感させられます。

2.これからの10年へ向けて

 これからの10年を展望する上で好都合なことに、今週は、1年に1度のインターネットウィークでした。インターネットウィークは、インターネット業界の技術者が主体となって、今日のインターネットが抱える課題を発表し合い議論する場で、最近では、業界が大きくなったためにパシフィコ横浜で行うことが恒例となっています。特に私自身、深く関わっているIPv6 Technical Summit 2005では、興味深い議論がなされました。僭越ながら私の基調講演で始まり、続いて業界を代表するトップエンジニア浅羽登志也IIJ副社長の基調講演、日本テレコム、YOZAN、NTT、マイクロソフト、総務省などでのIPv6に関わる実際の取り組みの現状報告がなされました。そして最後にアジアで初めてJonathan Postel Service Awardを受賞されました村井純慶応義塾大学教授の記念講演で幕を閉じましたが、早朝から深夜まで、インターネット技術の最先端に関わる人々の間で活発な議論が展開されました。ネットサービスベンチャーによる放送局の買収騒動だけに目が奪われがちですが、本質は技術革新にあり、今後の10年は、「インターネットと放送の融合」の時代となるでしょう。では、具体的に、どのような融合の時代となるのでしょうか?この将来展望の精度を上げるには、原点に帰って、技術革新の本質をとらえ、それに対応するにはどのようなビジネスが成立し、どのような法制度の見直しが必要になるのか?などを考えるために、このような議論の場がとても大切であると改めて思いました。

 さて、このようなインターネットにとっての新たなフェーズを迎えて、これからの10年へ向けて当社グループでは、既にBBTowerによるポータルサービスと連携したブロードバンド配信事業、PoDによる無料パソコン放送GyaO等のためのIP放送プラットフォーム事業、IRIユビテックによるWiMAX/WiFiワイヤレスブロードバンド事業に着手しております。そして、これらを集大成する新事業は、当社が中心となって進めてまいりたいと考えております。

 また、企業の成長力を維持・発展させるには、技術革新の本質に立脚した、「事業基盤の今日・明日・あさって」の戦略が重要だと考えます。この意味において、「通信とインターネットの融合」に基づく「今日の事業」、「放送とインターネットの融合」に基づく「明日の事業」、そして基礎となる科学技術の発展と直接関わることで「未知の領域とインターネットの融合」に基づく「あさっての事業」への挑戦を、先行投資期から利益拡大期へ移行した当社グループのミッションとして継続していく所存です。

 株主の皆様には、機関投資家のアナリストの方々を主たる対象とした四半期毎の決算発表会に加えて、前回行ったマネックスビーンズ証券主催の個人投資家向け説明会等の機会を、今後も積極的に増加させてまいりますので、その節は、是非おこし頂きますようお願い申し上げます。

 本日、株主の皆様のご支援により、第9回目の創業記念日を迎えることができましたことを重ねて御礼申し上げます。


2005年12月9日
株式会社インターネット総合研究所 代表取締役所長 藤原 洋

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