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所長コラム

株主の皆様へ(第63回)

『IBEとの放送・通信分野を進化/深化させるための業務提携について』
~ジュリアーニ/セイジとのIPシナジーファイナンス事業第一号案件~

藤原 洋

 全国で桜の開花情報が伝えられる季節となりましたが、株主の皆様におかれましては、如何お過ごしでしょうか。当社は、約1年間にわたって、ジュリアーニパートナーズ/セイジキャピタルグローバルと提携し、"IPシナジーファイナンス™"事業の可能性を追求してきました。すなわち、当社が各産業分野での有力な顧客基盤と独自技術を有する提携企業の発掘を担当、次に当社連結子会社であるIRI-FT(株式会社アイ・アール・アイファイナンスアンドテクノロジー)がアレンジメントを行い、主としてジュリアーニパートナーズ/セイジキャピタルグローバルが出資する投資ファンドから各社に対して資金提供すると共に、当社グループからIPテクノロジーを供与して提携先企業の企業価値と当社の事業拡大を図る仕組みです。このたび、その第一号案件が成立しましたのでその背景と今後の展望について述べさせて頂きます。

1. IBEとの資本業務提携の概要と目的

 当社は、"IPシナジーファイナンス™"事業の第一号案件として、株式会社アイ・ビー・イー(以下、「IBE」)と放送・通信分野で業務提携契約を締結するとともにIRI-FTは、IBEの発行する20億円の転換社債型新株予約権付社債の引受けをアレンジしました。
 当社グループは、これまでIP(インターネット・プロトコル)技術をコアコンピタンスとして、主として通信事業者とコンテンツ事業者に対して提供し、「インターネット業界」を形成してきました。一方、IBEは、デジタル映像のマスター管理技術をコアコンピタンスに、主として「放送業界」に強力な顧客基盤を築いてきました。
 今回の提携は、両社の強みを活かした「放送とインターネットの融合技術」を共同開発し、「放送業界」に対して新たなインターネットによるビジネスチャンスを提供することを目的としています。

2.IBEについて

 株式会社アイ・ビー・イー(1998年11月、東証マザーズ2347、http://www.ibe.jp/)は、"Interactive Broadband Environment#をキーワードに、ITを駆使することで、映像(ビデオ)情報をより表現力豊かな情報に変換・蓄積する「映像情報のマスター管理技術」をコアコンピタンスとしており、主として「放送業界」に対して同技術を提供してきました。これまでのIBEによる導入実績としては、新しいビジネスモデルの確立や多メディア展開を見据え、莫大な映像資産の効率的な管理・運用を目論む放送局における、ビデオアーカイブシステムや、デジタル映像システムなどの「Video-IT」ソリューションが主体です。

3.両社の業務提携による『IP+放送ネットワーク事業』の展望

 映像情報を変換・蓄積・伝送することにデジタル技術が本格的に導入されたのは、1988年5月カナダのオタワでのISO(国際標準化機構)SC2(Study Committee)にMPEG(Moving Picture Experts Group、動画像符号化専門家会合)というWG(ワーキンググループ)8が発足したことに始まります。当時、私も世界から集結した15人の専門家の一人として同会合に出席しましたが、今でもデジタル映像の創る新たな世界に胸を躍らせた当時の記憶を鮮明に思い出すことがあります。MPEGで行った標準化の内容は、膨大な情報量を有する動画像、高品質音響の情報量の圧縮と同期化にありますが、MPEG1(CD-ROM)、MPEG2(デジタル放送)、MPEG4(ワンセグ放送)と次々と伝達メディアに対応した標準化活動の成果を産み出すことができました。私自身、このように当社設立前の20年前から10年前までの10年間、動画像符号化に関わる研究開発と標準化/産業化に関わってきましたが、この間今回業務提携することとなったIBEが誇る映像情報のコンピュータ処理分野における業界トップの技術陣と古くから交流してきました。その後、今日に至る当社設立後の10年間は、私は、インターネットのインフラ構築に深く関わってきました。これまで、当社が、ほぼ全てのブロードバンド通信事業者、多くのCATV事業者、および最大手の移動通信事業者のIPネットワーク構築における技術支援をしてきた結果、MPEGを中心とするデジタル映像を、通信ネットワークを介して自由に伝送できる環境がようやく整いました。
 あれから約10年、当社とIBEは、デジタル映像のコンピュータ処理、ブロードバンド/モバイル・インターネットのインフラ構築と、それぞれ別々の道を歩んできましたが、今後の技術革新の流れは、「通信とインターネットの融合」から「放送とインターネットの融合」へと進化/深化しています。既に先行する新興企業によってインターネットを利用した放送型サービスが出現しており、当社グループも積極的に技術支援を行う中で、この新たなメディア・ビジネスの周辺に数多くの発明・発見があり、多くのノウハウを蓄積しつつあります。一方、今後、これらのインターネット利用の放送型サービスにおいて、「インターネット品質」から「放送局品質」への進化/深化が求められることになると思われますが、この分野において圧倒的に高度な技術力を有する当社とIBEとの業務提携は、映像メディアを革新する新技術と新サービスを産み出すものと確信しております。今回の業務提携によって、当社とIBEとが貢献してきたそれぞれの顧客にとっての新たなビジネスチャンスを共同して創造することで、双方の業績向上を果たしていきたいと考えております。
 当社の今後の事業展開につきましては、去る3月4日の名古屋での個人投資家向け説明会でお話しをいたしましたが、当社本体事業については、これらの「子会社群の事業を束ねる本体事業の準備」に入っております。従って、当社につきましては、「事業持株会社的位置づけ」から「顧客別グループ企業群を有する事業会社的位置づけ」へ移行しつつあり、今回の業務提携はその一環として位置づけられます。繰り返しになりますが、当社の経営戦略としては、「創業後3年間は、技術のコアを当社で蓄積するフェーズ」、「上場後5年間は本体で蓄積したコア技術をもとに子会社群を整備する分散型成長フェーズ」、そして現在は、「グローバル戦略に基づく本体事業をコアにした事業収束型成長フェーズ」へと移行しつつあります。このように当社本体事業を厚くすることで株主の皆様のご期待に応えていきたいと考えておりますので、今後とも株主の皆様には、尚一層のご支援・ご協力をお願い申し上げます。

2006年03月24日
株式会社インターネット総合研究所 代表取締役所長 藤原 洋

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