Everything on IP! & IP on Everything

HOME > IR情報 > 所長コラム

所長コラム

株主の皆様へ(第66回)

『企業価値向上と株主還元型企業への成長へ向けて』
~創業10周年を迎えての今後の配当政策について~

藤原 洋

 株主の皆様におかれましては、例年になく長期にわたる梅雨前線の停滞が続く中、いかがお過ごしでしょうか。皆様のご支援・ご鞭撻により、創業後10期目の決算期を無事終了することができましたことをまずご報告させていただきます。そこで、梅雨前線と歩調を合わせるかのようにすっきりしない株式相場が続いている中、8月の決算発表前ではありますが、今回は、企業価値向上策のさらなる強化と株主還元型企業への成長へ向けての、今年度から開始する、配当政策の実施について述べさせていただきます。

1. 企業価値と配当政策の検討

 当社は、前年度初めて、子会社2社の上場に関する記念配当を出させていただきました。これに対して、多くの株主の皆様にお喜びいただきましたが、一部の株主様からは、まだ成長期であり、当面は、配当よりも内部留保と成長資金として使うようにとのご指摘もいただきました。あれから約1年間、企業価値向上と共に株主利益還元について検討してまいりましたが、ここに株主の皆様にその検討結果をご報告させていただきたいと存じます。

 配当政策は、最近の敵対的買収事件の発生と共に買収防衛策としての活用に焦点が当てられ気味ですが、本来は、企業活動で得られたキャッシュフローについて、どれくらいを再投資し、どれくらいを株主の皆様にどのような方法で還元すべきかというところに本質があると思われます。これには、現金配当だけでなく、自社株買いによる利益還元策も合わせて検討されるべきであり、株式市場の状況などの外的要因も多く、また効果的な絶対額の大きさという意味において、両株主利益還元策には、それぞれの特徴を加味すべきと思われます。しかしながら一方では、ノーベル経済学賞受賞者のミラー/モジリアーニ理論では、静的経済系を前提とした場合、総資産、発行済み株式数、保有現金などの保存則から、配当政策および自社株買いの株式市場における評価は、独立である(いわゆるインカム・ゲインとキャピタル・ゲインの配分に過ぎない)と説いています。
 従って、企業価値とは、直接的には株式市場での評価ということになりますが、理論的には、株主利益還元策とは独立であると共に、実際の経済系は複雑であり、企業の個性と時代の流れに合った、キャッシュフロー配分を十分に検討すべきだと考えております。

2.当社における創業後10周年での決断

 今回も配当を実施することにより、今後の定常的な配当が可能となるような当社の配当政策についての検討には、当社の中長期経営計画に則って行いました。即ち、前回にも述べたように、「創業後3年間は、技術のコアを当社本体で蓄積するフェーズ」、「上場後5年間は、本体で蓄積したコア技術をもとにグループ会社群を整備する分散型成長フェーズ」、そして今期からは、「グローバル戦略に基づく本体事業をコアにした事業収束型成長フェーズ」へと発展させる経営戦略を採っております。換言すれば、創業後10年間、急速な技術革新に対応・先導するための先行投資と研究開発活動を優先させてきました。この結果、当社グループは、ユニークな連邦型独立経営によって、必要なグループ統制をはかることとするものの、各グループ会社が、自律分散的に成長し、特徴ある技術と顧客を保有することができました。従って、グループを束ねる当社の企業価値は、ファンダメンタルズとしての、連結対象企業の企業活動によって得られる連結EPS・BPS(1株当り利益、1株当り株主資本)と共に、上場/未上場グループ企業の株式含み資産を基本とする、自由度の高い財務戦略が可能となっております。インカム/キャピタルゲインを柔軟に活用することで、時代に適合した企業成長を継続していきたいと考えております。

 当社は、本体自身が、上場直後から「IPテクノロジー・ビジネスクリエイター」として、新技術という無形資産を自主開発し有形資産化する母体として、約5年にわたる先行投資によって多くの優良グループ企業を育成してきました。この結果、第10期を端境期として、創業期から約600倍の成長を遂げると共に、今後において定常的な最終利益を産み出せるようなインカム/キャピタルゲインの産出/配分メカニズムを検討いたしました。今回、ある水準達成による産出/配分メカニズムを、ここで満足することなく、今後も計画的に社会情勢に適応した改良を加え、維持・発展させていきたいと考えております。第11期からの同メカニズムについては、これまでの「分散型成長フェーズ」に適した事実上の持株会社から、「事業収束型成長フェーズ」の初年度にふさわしい知的財産提供事業とネットワーク社会基盤事業による本体の再事業会社化への移行を進める中で、その維持・発展を計画しております。

3.「事業分散型成長フェーズ」の具体策の特長とは?

 上記の「グループ会社を束ねる事業」の実現のための方策につきましては、前回にも述べたように、本体事業の構築については、【1】「知的財産提供事業」(シ-ズ・オリエンテッド)と【2】「ネットワーク社会基盤事業」(ニーズ・オリエンテッド)とを併用してまいりますが、さらにグループ内統合の方向性を新たに検討していく所存であります。具体的には、昨今のセーバーホールディングス株式会社の完全子会社化の方策のように、グループ企業を上場・独立させるのとは逆の方向であり、これまでの遠心力を効かせた成長だけでなく、グループを束ねるための求心力を発揮する共通技術の本体への内製化策であります。今後は、グループ企業の上場・独立策以上のグループ内統合策を効果的に打ち出すことにより、企業価値のさらなる向上と株主利益還元策の継続・発展を推し進めたいと考えておりますので、株主の皆様には、尚一層のご支援をお願いすると共に、8月の決算説明会および9月の定時株主総会へご参加いただきますよう重ねてお願い申し上げます。


2006年07月25日
株式会社インターネット総合研究所 代表取締役所長 藤原 洋

ページTopへ