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所長コラム

株主の皆様へ(第67回)

『第11期を迎えてのIRI2.0への挑戦』
~第10期決算発表後の業績予想、IR活動についての近況報告~

藤原 洋

 株主の皆様におかれましては、長梅雨後の例年になく短い夏を終え、秋めく季節となりましたが、いかがお過ごしでしょうか?去る8月28日には、第10期の決算説明会を行い、その後連日のように、機関投資家の皆様向けのIR活動を行っております。当社は、来る12月をもって創業十周年を迎えますが、振り返れば、インターネット革命の真っ只中に起業し、その後の東証マザーズの創設と同時に、第一号での上場を果たすという幸運に恵まれ、何度かの「期待と不安」「夢と落胆」が交錯する局面で、株主の皆様のご支援によって最後に訪れる「希望」という繰り返しの十年であったと思います。このたび、第10期の決算説明会後は、季節柄機関投資家の皆様向けのIR活動に全エネルギーをつぎ込む日々の中、当社ならびに当社グループに対する期待の大きさを改めて実感した次第です。今回は、第10期の決算説明会での第10期決算発表内容と第11期業績予想に基づく、機関投資家のファンドマネージャー、アナリストの方々との対話を通じての近況報告と感じたことを、今回は残念ながら直接対話の機会をもてなかった株主の皆様にもお伝えしたいと思います。

1. 第10期の決算内容について ~ 過去の全決算期のトレンドに注目 ~

 第10期決算発表会後の機関投資家向けIR活動において、総じて一番注目されたのは、今回初めて会社案内に取り入れた過去の全10期にわたる業績トレンドでした。そこには、日本のインターネットの本格商用化からネットバブルを経て、社会へ着々と普及していく歴史そのものを物語っているという背景があるからです。創業期の第1期から上場前後までの第4期までは、インターネットの発展経緯から当社の創業期の主要顧客であった通信事業者の方々と日本の商用インターネット・インフラ整備のための技術支援を主要事業とし、わずかながら黒字決算を継続し、初年度の1億円から11億円の売上と数千万円規模の利益を出してきました。第5期~第8期までは、上場によって調達した約100億円の資金による先行投資によって、整備されたインターネット・インフラを活用する、主としてポータル・ネット証券・ネット放送などコンテンツ事業者と、ネット端末機器メーカーの方々向けの新事業を立ち上げる時期でした。営業赤字にはなりましたが、180億円を超える事業規模まで成長してまいりました。先行投資の仕上げともいえる第9期と直近の第10期には、黒字転換を果たし、それぞれ約5億円と30億円を超える利益水準まで到達することができました。第1図から第4図に、創業から第10期までの当社の連結業績の推移を示します。

 これらの推移図から改めて、株主の皆様の長年にわたるご支援の大きさと、インターネットという技術革新の凄まじさを感じるところでございます。10年前には、存在しなかった企業が生まれ、新興市場という新たな社会システムを、株主の皆様と研究開発型ベンチャー企業が一体となって形成してきた成果であると認識すると共に、当社の経営ビジョンに対するご理解と根気強いご支援を頂いた株主の皆様に深く感謝いたします。インターネット技術そのものに挑戦する技術系企業よりも、インターネット技術を利用するサービス系企業のほうが短期的な利益と成長は見込めることが当然なのかもしれませんが、当社は、当社なりに顧客満足度という意味で、これまで技術へのこだわりと長期的な経営戦略に基づいて事業展開を行ってまいりました。株主の皆様のご支援によって、当社経営陣と従業員の信念と執念を継続することができ、顧客の皆様からの信頼を獲得することができた10期までの期間にわたる業績の推移であると存じます。株主の皆様からの期待としては、まだまだ些少ではございますが、約30億円規模の利益水準まで到達できたことは、私にとって、第11期以降へ向けて大きな励みとなりました。

2.第11期の業績予想について ~ 今回の業績数値の意味するところ ~

 今回の決算発表時点、すなわち第11期期初連結業績予想(以下、( )内は、第10期期初予想)は、売上605億円(463億円)、営業利益26億円(18億円)、経常利益29.2億円(16.5億円)、当期利益3.2億円(22億円)、配当500円(0配当)で公表いたしました。第11期の期初における第11期業績予想に対して、投資家様等より、第10期の最終結果と比較して減少しているように見えるが、確認の意味で、成長は継続しているかという質問を何件か受けました。さすがに、この質問の仕方には、奥が深いと感心しました。発表した数字上からだけでは読み取れない企業の成長力をどこに見るかという点だと思います。この質問に対しては、私は、以下の4点をポイントとして回答しました。
(1) 前期の最終業績(683、34.8、33.5、30.9)は、期初予想数値(463、18、16.5、22)から始めた最終の業績結果であって、公表の第11期の業績予想は、その期初予想数値に過ぎないこと(すなわち、この期初予想数値から始めてベストの最終結果を目指して今期の事業展開を図るという意味)。
(2) 当社は、連結対象企業のうち、主要なものがそのうち約10社あるが、今期業績予想が前期の最終業績よりも下方成長予想の企業はないこと
(3) 最も連結業績に大きく影響するIXIの業績予想について同社から発表されていない2007年4月~2007年6月期分を当社本体が独自に予測していること

(IXIが予測する2006年4月~2007年3月期の業績は、前年同期比で約20%の成長である。当社が連結対象とするIXIの事業期間は、2006年7月~2007年6月期となっている。このため、2007年4月~2007年6月期分は、IXIから発表されていない部分を独自に予測している。その数値としては、IXIにとっての今期第1四半期【IRIにとっての前期第4四半期】の2007年4月~2007年6月期分は、過去最高業績であったが、あえてこの数値は取り込まず、平均的な四半期数値を今期の最終四半期数値として予測している)

(4) 経常利益から当期利益が著しく減少して見えるのは、連結決算会計基準による連結調整勘定に基づく少数株主持分減少分があること

(例えば、51%の株式を保有している子会社の営業利益が30億円で当期利益が15億円の場合、連結上の営業利益はそのまま30億円加算されるが、15億円が加算された後、当期利益から49%分の7.35億円分が引かれる。今期は、期初予想時点で14億円強の連結調整勘定を仮定)

3.「事業分散型成長フェーズ」の具体策の特長とは?

 前回にも触れた上記の「グループ会社を束ねる事業」の実現のための方策につきましては、今回のIR活動でも大きな注目を集めました。そこで、本体事業の構築については、【1】「知的財産提供事業」(シ-ズ・オリエンテッド)と【2】「ネットワーク社会基盤事業」(ニーズ・オリエンテッド)とを併用してまいりますが、具体的には、次のように考えております。インターネットは、社会に普及したものの、まだ社会基盤にはなっていない部分があると思います。それは、現在のインターネットには、最終ユーザーにとって、「落ちないか?破られないか?操作がもっと簡単にならないか?」という不安があります。これらの問題を解決して初めて、インターネットを社会にとって必要不可欠な存在にできると考えられます。現在の当社に課せられたミッションは、まさにこの部分であると考えており、具体的には、日本のブロードバンドとモバイルにおいて醸成されたネットワークの設計・構築・運用技術と、逆に軍事技術を中心に欧米が進んでいるセキュアード・ネットワークにおける要素技術を組み合わせることが有用であると考えています。当社は、この方向性の中に、当社本体の技術開発を進めており、政府機関、金融機関などミッションクリティカル分野におけるインターネット利用を促進すべく次なる挑戦を始めてまいります。この新たな挑戦が結実する企業像を「IRI2.0」と当社グループでは呼ぶことにしております。そう遠くない時期に本体事業につきましても業績としてご提示できる時が来るものと確信し邁進してまいります。

 株主の皆様には、尚一層のご支援をお願いすると共に、9月26日開催予定の定時株主総会へも是非ご出席を賜りますよう重ねてお願い申し上げます。


2006年09月05日
株式会社インターネット総合研究所 代表取締役所長 藤原 洋

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