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所長コラム

株主の皆様へ(第71回)

『IXI民事再生手続開始申立てに関する当社の経営環境と経営姿勢について』

藤原 洋

 株主の皆様におかれましては、新年早々から当社にとって波乱の幕開けで、大変ご心配をおかけしていることをお詫び申し上げます。当社連結決算対象企業の中でも、特に「好業績」を出し続けてきた株式会社アイ・エックス・アイ(IXI)において、第19期半期報告書提出遅延による、2007年1月5日での突然のIXI株式の監理ポスト入り、1月19日の不正取引と役職員処分の公表、続く1月21日の突然の民事再生手続開始申立ておよび保全管理命令の決定、という一連の出来事に、当社関係者だけでなく、資本市場に関わる多くの方々から一体何が起こっているのか、というご質問を多数いただいております。今回は、当社連結対象企業において突如として発生した「好業績企業IXI」の民事再生手続開始申立ては、当社単独の問題としてだけでなく、日本のIT業界の問題点と今後の業界、そして資本市場のあるべき姿を探る上で極めて重要な局面を迎えたと認識しております。このような状況の中で当社の経営環境と経営姿勢について述べさせていただきます。

1.IXIの当社グループ入りの背景と経緯

 IXIの買収提案が証券会社を通じてあったのは、2005年春のことでした。この時期は、当社創業後、第9期にあたる2005年6月期で、当社としては、先行投資期を終え、上場後初の営業利益、経常利益、当期利益の3つの黒字化を達成した記念すべき決算期でした。先行投資期を終え、黒字化後の成長企業として期待に応える手段として、友好的M&Aは有効な手法であり、今回のM&Aが結果的に失敗であったとしても、「資本市場が正当に機能する」限り、本質的には有効かつ正当な経営手法であると考えております。
 IXIにおけるM&Aは、TOB(公開買付け)の手法を使い、この友好的TOBを成功させるために、2005年春から夏にかけて、資金調達、財務諸表の分析、営業取引に関する担当責任者からのヒアリングなど、当社の財務・法務チームは、証券会社をアドバイザーとして、会計および法務の専門家などと共に、徹底的なデューデリジェンス(※)を行いました。また、並行して、当社の事業担当役員による、IXI側の営業担当役員へのヒアリングなどの事業デューデリジェンスも実施いたしました。
 この一連のデューデリジェンスを踏まえての作業の結果、2002年3月ナスダックジャパン(現大証ヘラクレス)から東証二部への上場審査を経て、2004年3月に東証二部へ上場したIXIについて、IXIの上場基準を満たす監査法人の適正意見が、長期にわたって出されていることを踏まえ、IXIをTOBにより、子会社化することを決定しました。TOBの効力発生日は2005年8月15日でした。
 M&Aを実施する際の作業過程の中で、最も重要なことは、「資本市場が正当に機能すること」であり、上場企業の取締役、監査人などは、結果責任を全うするということだと考えております。

2.日本のIT業界の問題点を浮き彫りにしたメディア・リンクス事件

 2004年11月30日の新聞報道によると、システム開発会社のメディア・リンクス社(以下、メディア・リンクス)の粉飾決算問題が報じられています。これにより、 メディア・リンクスが、10社以上の情報技術関連企業との架空取引で 売上高の水増しをしていた実態が明らかにされました。メディア・リンクスの粉飾決算 は、IT業界の不透明な取引慣行の実態を浮き彫りにしました。メディア・リンクスの問題が表面化したのは、事件の約1年前。元社長が暴力事件で逮捕されたことに始まり、同年10月に、元社長が、メディア・リンクスの業績下方修正前に自社株を売り抜けた疑いで、大阪地検特捜部に逮捕されたことで、不透明な取引が発覚しました。調査の結果、メディア・リンクスの2003年3月期決算発表では、売上高165億円と公表したものの、その85%の140億円ほどが架空取引(循環取引)であったことが判明したとされています。
 循環取引(販売元が最終的に購入先になる)は実体のない違法取引であり、一方で、スルー取引(口座貸し)は、信用力の乏しい中小企業に高額商品を売る場合、信用力のある企業を伝票上で介在させる方法として始まったもので、現時点においても違法取引とはされておりません。
 しかしながら、メディア・リンクス事件の判明により、多くの会社が関わるスルー取引の集合体としての循環取引は、会計上の売上を水増しすることのみを目的とした架空取引であることが明らかになりました。それに伴い、スルー取引についても、その一部を構成する恐れがあることから、危険性が高い取引であることも判明しました。
 今回、当社がIXIより2007年1月19日に調査報告を受けてから、そこで初めてわかったことは、IXIは、メディア・リンクス事件の循環取引に関わっていたということ、そして、ここ数年のIXIの売上の大部分をスルー取引と循環取引が占めているということでした。このことは、当社だけでなく、多くのIXI株主の皆様にとっても、IXIの事業が「GIS(地理情報システム)の技術力を基本としたシステム開発力」をコアコンピタンスであるという認識を覆すものであると思います。
 ここで、極めて重要なことは、「メディア・リンクス事件はまだ終わっていない」という警告を発することです。IT業界に巣食う、巧妙な手口に基づくスルー取引の集合体としての循環取引の構造は全て排除すべき違法な取引です。今回のIXIを契機に当社としてやるべきことは、長年にわたって、見せかけの「売上」「利益」が計上されたIXIの損益計算書とそれを根拠付ける「棚卸資産」「売掛金」「買掛金」「有利子負債」を含んだIXIの貸借対照表に対し、「正当性」を与えてきた責任の所在を明らかにし、資本市場の健全性を回復することにあると考えております。

3.当社を取り巻く経営環境と経営姿勢について

 当社は、自主技術を蓄積し、グループ企業への移転を図ることで、連邦型独立経営によって成長戦略を取ってきました。再認識すべきことは、自主技術をベースに価値を創造することこそがIT業界の企業が行うべき事業であり、その価値に対する対価とコストの差が、プラスであれば黒字、マイナスであれば赤字、その黒字と赤字の意味の集計結果が企業価値を決定することだと思っております。見せかけの黒字IT企業ではなく、自主技術によって、企業価値を産むIT企業の存在が、今日の日本のIT業界の進むべき方向性だと考えております。
 当社の考えとしては、IXIは、今後更に調査を進めた上で、当期数値だけでなく、既に監査法人の適正意見取得済みの過年度にわたっても大半の売上数値を除去すべきではないかと考えております。この修正については、真実を明らかにすることを含めて監査法人の協力が得られること、また、IXIの取引先の上場企業の監査との整合性を取るべきことで、当該企業の協力が得られることが重要であります。
 当社には幸いにして、自主技術に基づく上場優良企業と、まだ顕在化していない当社本体事業の成長力と、優良未上場子会社が当社の資産価値を形成しております。従って、IXIの株式評価損144億円の計上は見込んでいるものの、資産勘定には十分な余裕があり、当社の存続性、企業価値の回復、株主の皆様の資産回復のための法的措置による損害賠償等、当社がやるべきあらゆる可能性を追求しております。

 株主の皆様におかれましては、当社は、IT業界の技術のファンダメンタルズを追求する企業として、不正を断固として排除し、株主資産の回復に向けて尽力する所存ですので、引き続きご支援・ご協力の程お願い申し上げます。


※デューデリジェンス(Due Diligence)
適正評価手続き。投資家が投資をおこなう際や金融機関が引受業務をおこなう際、投資対象の実体やリスクを適正に把握するために事前におこなう多面的な調査。


2007年1月24日
株式会社インターネット総合研究所 代表取締役所長 藤原 洋

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