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所長コラム

株主の皆様へ(第73回)

『不正取引防止へ向けてのIT業界における今後の取り組みについて』

藤原 洋

 株主の皆様におかれましては、当社連結決算について、東証開示ルールに基づく決算短信発表の延期に対し、大変ご心配をおかけしていることを改めてお詫び申し上げます。発表延期となっている原因は、かつて当社連結決算対象企業として扱ってきた、株式会社アイ・エックス・アイ(IXI)の不正(循環)取引による影響でありますが、IXIの不正取引は、IXIだけでなく他の企業間での一連の事件であり、去る2月28日には、大阪地検特捜部の強制捜査がIXIおよびその取引先企業に入り、真実が解明されつつあります。捜査の進展に期待すると共に、事件の被害者であるIXIの株主、債権者、取引に関わった企業、および当社を含む特別損失計上を余儀なくされた企業とその株主を代表して、当社としましては、今回ここに、一連の事件被害者を被害者として終わらせることなく、損失の回収と再発防止ヘ向けての取り組みについて述べさせていただきます。

1.IXIの不正取引と株式上場の経緯

 一連の新聞報道によると、2001年頃に不正取引の起源があるとされており、2003年から、IXIの一連の不正取引は、定着していたと思われます。去る1月30日に同社管財人が刑事告発した人々を中心に、以下のようなIXI沿革の中で不正取引が行われてきました。また、このような不正取引は、その後の報道によるとIXIだけでなく、多くの上場および未上場企業が関与しているとされています。
 ・平成13年(2001年) スルー取引開始:メディアリンクス事件に関与
 ・平成14年(2002年) スルー取引増加
 ・平成14年(2002年) 大証ヘラクレスに上場
 ・平成15年(2003年) 不正(循環)取引開始/ 4月以降大半が不正取引化
 ・平成16年(2004年) 東証二部に上場
 ・平成17年(2005年) 不正取引増加
 ・平成19年2月28日 大阪地検特捜部による強制捜査

2.当社としての対応と問題意識

 当社としましては、以上のようなIXIの沿革と株式上場の経緯の中で、前回のコラムでも触れましたように、東証二部上場企業としてのIXIの「信頼性」を最終保証として、平成17年8月TOBによって同社を子会社化しました。このTOBを実行する際には、証券取引法、会計基準の専門家に依頼し、入念な法的・会計的デューデリジェンス(Due Diligence適正評価手続き。投資家が投資をおこなう際や金融機関が引受業務をおこなう際、投資対象の実体やリスクを適正に把握するために事前におこなう多面的な調査)を行ったと共に、IXIの事業および前親会社からのヒアリング調査を行いました。当社が実施したこの一連のデューデリジェンスプロセスは、IXIの有価証券報告書、財務諸表などに虚偽記載がないということ、および上場企業経営者としての倫理に基づき虚偽説明はないという前提において、適正であったと考えております。また、TOB後におきましても、東京証券取引所からの上場子会社の独立性確保のガイドラインに沿って、役員派遣も行うことなくIXIの独立性を確保し、尊重してまいりました。
 ところが、長年にわたって行われてきた巧妙ともいえるIXIによる不正取引が、当社および当社が委託した会計・法務の専門家チームによるチェック、IXIの監査法人によるチェック、および証券取引所のチェックをくぐり抜けてきたことは誠に遺憾であり、日本経済の発展を担うべきIT産業の今後の発展にとって、極めて重大な社会問題であると認識しております。

3.財団法人インターネット協会と不正取引防止委員会

 ここで私が副理事長を務めております財団法人インターネット協会(http://www.iajapan.org/)について述べさせていただきます。同財団では、主務官庁を総務省、経済産業省とし、「インターネット上に未来社会を築く」インターネットの発展を推進することにより、高度情報化社会の形成を図り、我が国の経済社会の発展と国民生活の向上に資することを目的とした活動をしております。これまで、インターネット最新技術および最新動向に関する各種セミナー開催、フィルタリングソフトウエアの普及およびレイティングシステムの構築運用各種部会活動、人材育成、インターネット関連技術の開発と実証、インターネット関連技術の標準化推進、インターネット動向調査、インターネットホットライン連絡協議会(Internet Hotline Expert Network)の事務局業務、W3C、IETF、ISOC、ICANN、APIA、APNGなどの国際組織との協働および国際連携などの活動を行ってきました。
 当社としても、同財団において積極的な活動を行っておりますが、このたび、同財団に関係する企業やその株主、および資本市場に関わる多くの人々が、当社および当社株主が今回IXIの不正取引事件で経験した経済的被害と苦痛を二度と被ることのないように、先日の企画運営委員会にて「不正取引防止委員会」の発足を提案し、承認されましたことをここにご報告させていただきます。同委員会では、当社の経験した事実を委員会にて共有し、ソフトウェア/インターネット技術の専門家、会計専門家、法律専門家を中心にソフトウェアの取引における監査方法に関し、ソフトウェアおよびインターネット技術を駆使した新たな監査方式の検討・立案を通じて、会計監査だけでは看破できなかったと思われる不正取引を防止する仕組みを創り出していきたいと考えております。

 株主の皆様には、大変ご心配をおかけしておりますが、捜査機関と報道機関によって、今回のIXIの不正取引の実態がさらに明らかにされることをもとに、株主価値の回復を図っていきたいと考えておりますので、変わらぬご支援・ご協力の程お願い申し上げます。今回の経験を活かし、不正取引を再発させない抜本的な法体系と、これを支援する技術体系を、財団法人インターネット協会等を通じて提案し、健全な情報通信社会の実現へ向けて尽力したいと考えております。


2007年3月13日
株式会社インターネット総合研究所 代表取締役所長 藤原 洋

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