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所長コラム

株主の皆様へ(第75回)

『これまでのご支援への御礼と今後の展望について』

藤原 洋

 例年より1週間ほど遅れての梅雨入りとこれまでの空梅雨は、日本付近で吹く偏西風が南に大きく蛇行し、梅雨前線が南側に抑えられていたためのようです。今年の半ばの異常気象と同様、かつて東証二部に上場し、当社の子会社であった(株)アイ・エックス・アイ(以下、IXI)の不正取引の発覚によって起こった一連の予期せぬ事態によって、当社が本日6月24日の上場廃止日を迎えたことは、私にとって誠に無念であると共に、これまで当社をご支援いただいてきた現在・過去・未来の株主の皆様への感謝の念で一杯であります。
 今回は、これまでのご支援と株主の皆様への御礼と今後の展望について述べさせていただきたいと存じます。

1.東証ホールにおける6月4日の説明会開催を巡って

 これまでの一連の新聞報道等によると、IXIの不正取引は、2001年頃から始まっており、IXIだけでなく他の多くの企業を巻き込んだ経済事件であり、加害者が放置され、被害者(当社を含むIXIの株主や債権者)にペナルティが課せられるという理不尽な事態になるとは全く予測しておりませんでした。しかしながら、本年3月30日に監理ポスト入り、その後、東証の上場維持審査における照会には、当社が上場維持するために精一杯の説明をしてまいりましたが、5月23日に、突然の上場廃止決定通知がなされました。上場維持を信じていただいてきた株主の皆様、そして、様々な対応を行ってきた当社役職員および監査法人、弁護士事務所の担当の会計士および弁護士など、多くの人々が失意の中、私が最初に行ったことは、東証ホールを使える最後のチャンスとしての説明会を開催することでした。そこで、「上場廃止に至る経緯と今後の展望について」と命名した説明会を開催することを考え、過去の経緯はともかく、正直、開催をするにあたり、会場予約時点で株主の皆様や報道機関の方々にお話できる具体的な展望は未定でした。それでも、6月24日という上場廃止日が迫る中、様々な批判や疑問をあえてお受けしようという目的での開催決意でした。今後の展望については、与えられた10日間の中で、できる限りのことをやろうということで、関係者全員で取り組むこととしました。幸いにして、当社には、上場廃止企業としては、不正が一切なかったことと、純資産も豊富にあったことから、オリックス株式会社をはじめ多くの事業会社や投資ファンドによるMBOの提案をいただいていた中から、10日間の間にできる限り、株主の皆様にとって最善な方法を模索してきました。この結果、当社役員の間では、様々な意見の相違がありましたが、IRI株とオリックス株について1:0.667の比率での株式交換基本合意契約が6月4日に成立し、当日、発表することとなりました。振り返れば、本年早々のIXI事件の発覚とSBIホールディングスとの経営統合契約の白紙撤回、監理ポスト入り、整理ポスト入り、グループ事業会社での親会社信用不安による様々な障害が発生する中、整理ポスト段階の3倍以上の企業価値評価を行ったオリックス株式会社との株式交換という、当初は全く予期せぬ結末を迎えることとなりました。

2.創業から東証マザーズ第1号上場、今日までを振り返って

 1996年12月9日当社は、「学術研究に蓄積されたインターネット技術をあらゆる産業分野に展開すること」を企業目的として設立し、日本のインターネット・トラフィックの混雑解消のための商用IX(インターネット・エクスチェンジ)の立ち上げ、固定電話会社によるインターネット接続事業の立ち上げ、移動通信事業者によるインターネット事業の立ち上げ、CATV/ADSL/FTTHを用いたブロードバンド通信事業の立ち上げ、ブロードバンド環境におけるコンテンツ事業者のためのデータセンターなど配信プラットフォームの立ち上げ、ユビキタスネットワーク環境の立ち上げなどを約10年間行ってきました。この間、ほとんどの通信インフラ事業者、有力コンテンツ事業者/先進的金融サービス事業者、および有力通信機メーカー/コンピュータメーカー、有力家電メーカーの皆様の技術支援を行うことができたことを嬉しく思っております。その過程で、小規模ながら創業以来4期連続の黒字(1997年~2000年)を達成し、その後東証マザーズ第1号上場により約100億円の資金調達と上場後の先行投資期(2001年~2004年6月期までの4期)を経て、2社の子会社上場を達成し2005年6月期には黒字復帰後の次なる成長期に入りました。その翌期である2006年6月期のIXIの子会社化と、今期でのIXIの経営破綻に遭遇し、誠に遺憾ながら当社までもが上場廃止となったわけです。しかしながら、当社が立ち上げてきた事業は、順にグループ企業へ移管し発展させるという「連邦型独立経営」を標榜してきましたので、現在も上場グループ会社2社と主要未上場子会社3社を中心に日本のインターネット・インフラを立ち上げてきた、優秀な従業員と知的財産に基づく優良な顧客基盤は維持・発展しております。ここまで、当社の事業活動を支えていただいた過去の株主の皆様に改めて感謝の意を表させていただくと共に、オリックス株式会社との株式交換へ向けて現在も当社株主になっていただいている株主の皆様には、次なる成長フェーズへと夢をつないでいただき、御礼申し上げます。

3.今後の展望について

 「学術研究に蓄積されたインターネット技術をあらゆる産業分野に展開すること」を企業目的として設立された当社は、今後オリックスグループの一員として新たなスタートを切ることとなりました。私の認識では、現時点での同社グループの事業領域を要約すると、50万社の主として中小企業金融事業(「人」によるビジネス)、自動車や様々な機器のリース・レンタル事業(「モノ」によるビジネス)、およびオフィスビル・マンションなどの不動産事業(「空間」によるビジネス)の3つの柱を中心に成立しているように見えます。これらの事業領域にどのような当社グループとのシナジー(相乗)効果が見込めるのかというところが、当社=オリックス株主、当社グループの上場企業(IRIユビテックやブロードバンドタワー)、および未上場企業(IRI-CT、PoD、GKNなど)にとって最も重要な点です。今後、じっくりとシナジー効果の追及を図っていく所存ですが、一例をあげると、オリックスの法人顧客の大半は、インターネットでいうロングテール(図参照)の「テール領域」に属するものと想定され、これまでIT化が進んでいるのは「ヘッド領域」の大手企業中心であり、世界的に見ても今後のITが見込まれる成長市場は、明らかに中小企業であり、マイクロソフト社やシスコ社などの世界的IT企業が最重点市場として位置づけているものの、中々きっかけをつかめないでいる分野でもあります。当社および当社グループは、創業当時の企業理念を忘れることなく、今回の株式交換契約を契機にロングテール領域に注力し「あらゆる産業分野へインターネット技術を展開すること」企業目的を再認識し、IT革命という21世紀の産業革命の先導者として今後とも活動してく所存であります。
 最近出版されたヤンキースの松井秀喜選手の著書『不動心』にこんなフレーズがありました・・「僕は、生きる力とは、成功を続ける力ではなく、失敗や困難を乗り越える力だと考えます」。企業経営者もプロスポーツの選手も共通点があると思っています。改めて、過去・現在・未来の株主の皆様に感謝申し上げ、今後の新たな局面においても、あらゆる失敗や困難を乗り越えて行きたいと考えております。

インターネット革命は、ロングテール革命に本質が存在!


2007年6月24日
株式会社インターネット総合研究所 代表取締役所長 藤原 洋

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