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所長コラム

皆様

『刑事事件としてのIXI事件の新たな展開について』

藤原 洋

 例年より少し遅れての梅雨入り宣言が、日本列島の南方から聞こえてくる季節となりました。私としましては、昨年初頭の株式会社アイ・エックス・アイ(IXI)の不正循環取引による経営破たんに伴い、当社、当時の当社の株主およびIXIの株主の皆様など、多くの被害者の方々を襲った、未曾有の経済事件であるIXI事件に対して、言い表しようのない無念さと憤りを感じてまいりました。しかしながら、ここへ来て、このたびIXI事件が刑事事件としての新たな局面を迎えましたので、IXI事件について述べさせていただきたいと存じます。

1.刑事事件としてのIXI事件の悪質性について

 今回、刑事事件としての展開を見せ始めたIXI事件に関する一連の報道によると、IXIの不正取引は、2001年頃から始まり、巧妙であり、IXIだけでなく他の多くの企業を巻き込んだ未曾有の経済事件であります。また、当社にとっては、加害者が放置され、被害者(当社および当時の当社株主を含むIXIの株主や債権者)にペナルティが科せられる事態となり、昨年3月30日の監理ポスト入り、5月23日の突然の上場廃止決定通告がなされました。当社の上場維持を信じていただいてきた当時の株主の皆様、そして、様々な対応を行ってきた当社役職員および監査法人、弁護士事務所の関係者など、多くの人々の失意が、IXI事件の悪質性と犯罪性を物語っております。
 IXI事件の概要につきましては、私自身が副理事長を務めます、財団法人インターネット協会(経済産業省、総務省共管)にて、「不正取引防止委員会」を立ち上げ、法律の専門家を招き、事件の本質解明と再発防止策について検討してまいりました。その中での共通認識は、以下の点であります。

IXIの架空循環取引において中心的役割を果たしたのは、IXI経営幹部、営業責任者、および業界の「商流コンサルタント」であること。
IXIを起点に複数の商流を形成し、非常に複雑な「商品」(実際は殆どが伝票だけ)と「資金」の流れとなっていたこと。たとえば1つの商流内部では、IXIから「出荷される」(実際は伝票だけ)ソフトをA社へ販売、A社はB社へ販売、・・・・Z社は、IXIへ販売となりIXIへ戻ってくる仕組みとなっていた。
東証二部上場企業としての「信用力」をフル活用していたこと。この「信用力」によって、多数企業を巻き込んだ複数の循環取引ループを形成し、多額の金融機関からの融資を引き出していたこと。
実在しないソフトウェアの循環取引を行い、最後に最初の「出荷価格」よりも高額の「買い戻し価格」が発生するために、現金が大きく減少する。これを埋め合わせるために東証二部上場企業としての公募増資などの新株発行によって新たな資金調達を行っていた。
高い株価を維持するために、業績を良く見せるために実体のないソフトウェアの資産価値があると装ってきた。

 以上のようなことが、法律の専門家などの調査により明らかになっていますが、ここで悪質なのは、悪意をもって商流を組み立て(多くのスルー取引実行者を巻き込んでいること)、時には偽造注文書を作成し、虚偽の有価証券報告書を作成し、これを元に、資本市場から、詐欺的に当社や当時の一般株主から資金を調達していることにあります。

2.当社の受けた被害と当社の現状について

 1996年12月9日、当社は、「学術研究に蓄積されたインターネット技術をあらゆる産業分野に展開すること」を企業理念として設立し、日本のインターネット・トラフィックの混雑を解消するため、商用IX(インターネット・エクスチェンジ)の立ち上げ、固定電話会社によるインターネット接続事業の立ち上げ、移動通信事業者によるインターネット事業の立ち上げ、CATV/ADSL/FTTHを用いたブロードバンド通信事業の立ち上げ、ブロードバンド環境におけるコンテンツ事業者のためのデータセンターなど配信プラットフォームの立ち上げ、ユビキタスネットワーク環境の立ち上げなど、日本のインターネットインフラを、技術面で支えるという挑戦を約10年間行ってきました。そして、次なる成長の一歩として、一般企業の情報市場への参入のために「企業情報系」に強い企業のM&Aを当面の経営課題としておりました。
 このような中、IXI買収のきっかけとなったのは、信頼できる証券会社からM&A案件として紹介された案件であり、IXIが東証二部上場企業であったことから、所定のデューデリジェンスを経て、2005年8月にIXIを子会社化したわけですが、この時にTOBで過半数のIXI株式を旧親会社の株式会社シーエーシーと当時IXI代表取締役社長の嶋田博一氏から約116億円を支払って、取得しました。また、IXIからの要請によって、2006年2月には、当社への第三者割当て増資と公募増資により、IXIは、約54億円を新たに調達しました。当社は、この時に27億円の第三者割当増資に応じて、連結親会社の立場を維持することとしました。
 ところが昨年(2007年)1月に、IXIが民事再生手続きとなり、当社が投じた合計で143億8000万円のIXI株式の価値は一気に無価値となりました。このIXI破たんにより、当社が直接被った被害額は、143億8000万円ですが、金額に換算できない信用失墜等の大きな影響をうけました。IXIが突然の民事再生手続きを行ったことから、一気にグループの信用不安が起こり、当時の当社株価の下落、および当社の上場廃止基準への抵触問題へと発展しました。東証の上場廃止基準には、「監査法人からの適正意見が出ない場合で、かつ、東証がその影響を重大だと認めた場合」と記述されています。当時、突然の民事再生が起こったことから、同社は管財人の手に移り、決算に関わる集計作業が行えなくなったことから、期限内に決算書が作成できなくなり、波及的に当社は、IXIを含む連結決算が作成できなくなりました。この結果、2007年6月期の中間決算が監査法人から適正意見をいただけない状態に陥ったため、昨年3月30日に監理ポスト入り、5月23日に上場廃止決定、6月24日に上場廃止が決まりました。この当社の上場廃止は、当社が10年間にわたって築いてきたものを一気に失ってしまったという決定的な大きな損害となりました。
 このような大きな損害を被りましたが、当社は、引き続き会社法上の大会社として監査法人による監査を受け、当事業年度の2008年6月期の中間決算に対しては、本年3月に適正意見をいただき、適正意見付の半期報告書を提出することができました。この監査法人による当社決算への適正意見の取得は、IXI事件を乗りこえて、当社および当社グループが復活しつつあることの大いなる証であることを皆様にご報告したいと存じます。

3.刑事事件を契機として望むこと

 以上に述べたように、IXI事件は、東証二部上場企業という立場を悪用した許されない、手の込んだ経済犯罪であります。また、IXI事件に代表される、このような経済犯罪は多発していますが、その背景には、創造的技術開発を放棄した形式的な売上/利益への営業ノルマ主義が横行する業界商習慣と共に、経済犯罪に対する処罰が軽すぎるという側面があると思われます。今後、当社や当社およびIXIの株主のような被害者を二度と出さないために、検察庁による捜査の徹底と加害者に対する厳罰を望みたいと考えております。


2008年5月29日
株式会社インターネット総合研究所 代表取締役所長 藤原 洋

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