第24回 新産業革命論最終回
(2007年12月)

IPがもたらす構造変化は現在進行形

 2006年1月からの本連載も今回で最終回となりました。今なお現在進行形の「インターネットによる産業革命」について到底語り尽せるはずもありませんが、IPがいかに多くの産業の構造変化をもたらしているかは感じ取っていただいたのではないかと思います。
 具体的には、通信分野を起点に、コンピュータ、家電、放送、広告、新聞、出版、金融、流通、教育、医療、法律、会計、中小企業経営、不動産、製薬業界が大きく変化、あるいは変化しつつあることを述べてきました。そして、IPという通信インフラ技術に加えて、登場したWeb、Web2.0、P2P、NGNといった技術の位置づけについて述べてきました。

インターネットによる社会変化はこれから

 しかし、再度強調しておきたいのは、新・産業革命論の出発点は、「科学者と技術者」に自然発生的に芽生える「好奇心と探究心」であり、それが、時として、とんでもない「発見と発明」をしてしまうことがあるということです。そして、そのとんでもない「発見と発明」が、「生活習慣と商習慣」を変え、「制度と法律」を根本的に変えることになるということです。
 本連載では、このような「社会の部分的変化」をもたらす、一連の「発見と発明」を「技術革新」と呼び、さらに一連の「技術革新」によってもたらされる「社会の構造的変化」を「産業革命」と呼んできました。また、過去の産業革命の原動力となったのは、第一次が力学、第二次が物質科学、現在進行中の第三次が数理科学であることを述べてきました。本連載のテーマの「インターネット」による社会の変化は、まだ始まったばかりです。

日本の国際競争力を強化するための決意

 一方では、最近、日本の国際競争力の低下が取沙汰されていますが、私も参加させていただいている総務省総合通信基盤局の専門委員会でも「国際競争力の強化」がテーマとなっています。情報通信のように、激しい変化が起こっている分野では、特に、社会が技術革新の先導者となり得る人材を輩出できるかという点を大いに議論すべきであると思います。
 また、日本のような非資源国においては、なおさら、産業の国際競争力の源泉を、技術革新の担い手となる人材育成を如何に行うかが国策上の最重要課題として取り組むことが今後求められてくるものと思います。
 私も、本連載を契機に、今後は、産学官連携による情報通信分野を中心とした人材育成に注力する所存であります(完)。