第8回 インターネット革命は広告産業を変えるか?
(2006年8月)

ロングテールメディアとしての台頭

 マスメディアは、これまで“マス4メディア”とも呼ばれるように、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌を指してきましたが、例えば、ヤフージャパンの閲覧ページ数は、2002年10月に100億ページビュー、2005年10月には300億ページビューを突破したように、ポータル・サイトは、マスメディアの地位を確立しました。また、アマゾン・ドットコムに代表されるロングテール市場(売れ筋商品だけではなく、少量販売数品目を扱うことで開拓される新市場)の開拓によって、インターネットは、“ロングテールメディア”としての新たなメディア属性が認識されました。

 このように、インターネットの爆発的普及によって、消費者のライフスタイルや価値観などに大きな変化が起こり、既存メディアによる広告手法には限界が見えてきました。インターネットは、既存メディアではできなかった消費者との“直接接触”を可能にしたはじめてのメディアですが、そしてこのメディア属性こそが、インターネットが広告産業を根本的に変えてしまう可能性を秘めているのです。

急成長遂げるアメリカのインターネット広告

 インターネット広告は、1994年10月27日のホットワイアード創刊に14社分のバナー広告が掲載されたのが最初ですが、アメリカでは、1996年4月にマイクロソフトやインフォシークが立ち上げたIAC(Inretnet Advertising Council)を前身とするIAB(Interactive Advertising Bureau)が設立され、インターネット広告の概念や広告取引の標準化が進行しています。日本では1999年4月、日本広告主協会がインターネット広告の課題や効果などを研究する専門組織としてWeb広告研究会を発足、広告会社や媒体社などがインターネット広告推進協議会をスタートさせました。

 ジュピターリサーチの調査によると、アメリカのインターネット広告市場の昨年8月時点の予測として、2004年に93億ドルだった市場は、2005年に119億ドル、2010年には189億ドルにまで成長するとされています。2005年の総広告市場の伸びが対前年比約3%であるのに対してインターネット広告市場の伸びは13.9%であるとされています。

もっと凄い日本。今年中に雑誌を抜く?

 一方、日本の同市場は、電通によると、2,808億円(そのうちモバイル広告288億円、検索連動型広告590億円)と推計されており、総広告費5兆9,625億円のうちの4.7%に相当します。主要メディア広告費の前年比は、テレビ99.9%、新聞98.3%、雑誌99.4%、ラジオ99.1%に対し、インターネット154.8%となっています。このアメリカ以上の日本での同市場の高成長要因は、ブロードバンドの普及とモバイルや検索連動型広告など広告の多様化にあり、インターネットの広告メディアとしての価値を高く評価する広告主が増加しています。

 2006年の総広告費は前年比102.1%の見通しですが、インターネット広告は50%以上の高成長を維持することが確実視されています。2004年にラジオ広告費を抜き、2007年に雑誌広告費を抜くと予測されていますが、このままいくと、2006年に早まる可能性が高まってきました。国家のGDPの約1%を占めると言われる広告市場の中でインターネット広告はまだ5%程度になったばかりですが、国民生活の構造変化とともに、その比率は、さらに高まり続けていくことでしょう。