第9回 インターネット革命は新聞業界を変えるか?
(2006年9月)

新聞を読まないいまどきの大学生の情報源

 1995年に日本で初めての新聞のサイトがオープンしてから10年以上が経過しました。通常、新聞のビジネスモデルは、定期購読や店頭販売、広告収入、その他イベント収入などが基本ですが、インターネットは、本格的商用化後約10年を経て、新聞業界に大きな影響を及ぼすようになりました。例えば、2005年の総広告費5兆9,625億円中、新聞広告は1兆377億円で、テレビの2兆411億円に次ぐ第2位ですが、インターネットは、2808億円で、雑誌の3945億円に次いでの4位であり、10年前にはゼロに近かったものが徐々に他のすべてのメディア広告を侵食しています(電通)。

 ニュースの入手手段でテレビ39.9%、新聞18.2%の間に、インターネットが27.1%で第2位に割り込んできました(インターネット白書2005)。私は、時々大学で講義していますが、前回の特別講義の際に約百名の学生を相手に「新聞を購読しているか」の挙手を求めたところなんと回答はゼロでした。

ポータルと検索エンジンが人気

 このような背景から、新聞社もインターネットを無視できなくなり、最近では、防戦から攻勢に出ているように思えます。例えば、ニュース速報のトップページにはトップニュースと、それに5つ程度の見出しが続きます。読者は、読みたい記事をクリックして選ぶようになっていて、[社会][政治][経済][国際][スポーツ][人事消息]などに分かれ、ジャンルごとに1つのページに収められることが一般的になりました。また特集の欄では、最近話題のテーマを詳しく知るために「特集ページ」を見ることができます。特別のテーマに関連する過去の記事やウェブサイトだけの記事も数多く読めます。

 しかしながら、新聞社にとって、これは良し悪しで、基本的に無料ですので、そこから購読料を徴収することは難しいのが現状です。インターネット上の有料サイトはきわめてアクセス率が低く、かえって採算性が悪くなるというジレンマがあります。これに対して、ポータル系のニュースは無料であるともにアクセスが多いため広告価値も高く、いまや、“ポータル”と“検索エンジン”のトップサイトは、どの新聞社サイトよりもニュース利用シェアが高くなっています。

新たなメディア、インターネット新聞の登場

 こうした結果、インターネット新聞は、(1)テレビより遅いが紙より速い、(2)しかし、必要なときに必要なだけアクセスが可能、(3)新聞社の副業、といった従来の属性を超えた役割を担いつつあるように思えます。インターネット新聞で公開されている情報は「記者が取材して記者の目を通して書かかれたもの」と「一般人が書き込んだ記事」とが混在していますが、見方を変えると、このことは読者にとって、テレビ、ラジオ、新聞に次ぐ新たなメディアが登場したということになります。

 インターネット新聞のひとつの特徴は、“重み付け”をつけて、たくさんの新聞を読む、いわば「新聞の新聞」ということです。その意味で、昨年登場したグーグル・ニュースは、じつに新たな可能性を示唆しています。この延長線上で登場するのが、まさに「新聞の新聞」です。インターネットを通じ、いままで見たことのない地域の新聞や、たとえ言葉が分からなくても海外の新聞も届くようになる。さらに「この新聞はいま世界中でどの位の人が読んでいるか」といったことも分かるのです。