第12回 インターネット革命は金融をどう変えたか?
(2006年12月)

インターネットと金融業は相性バッチリ

 インターネットは、通信インフラを刷新し、いまでは放送・出版・新聞・広告といった、さまざまなメディア産業を変えつつありますが、その中で最も劇的に変化を遂げたのは「金融業界」ではないかと思われます。実際国内で「ネットベンチャー」と呼ばれる企業の多くは、インターネットを通じた「金融業」が収益基盤となっています。ここ数年「ネット証券」による株取引の急増の結果、証券取引所のシステムが容量オーバーとなり、取引時間に制約が加わったり、新規上場の見合わせが起こったりする事件が多発しました。このような一連の事象は、インターネットによって「金融システム全体が変化している」ことを表わしています。 事実、証券・銀行・保険などの金融商品は、店頭に出向くまでもなく、パソコンで売買することが当たり前になりつつあります。今回はインターネットと金融業との相性の良さは一体どこから来ているのかを考えてみたいと思います。

共通する均一性という両者の特徴

 まず、インターネットの最大の特徴は、"The Internet"と呼ばれるように、個々のユーザーが持つグローバルIPアドレスという固有のアドレス(実際は、現行のIPv4のインターネット仕様のアドレスが不足しているため、プライベートアドレスを付加して対処している場合がある)で一元管理されており、世界中のコンピュータが、「1つのネットワーク」で相互接続されているところにあります。換言すれば、インターネットには、"The Internet"による「均一性」があるのです。

 一方、多くの金融商品にも、金銭というすべて等しく共通の価値を売買するところからくる「均一性」があるように思われます。このため、パソコン画面上で金融商品の優劣を簡単に判断できるとともに、価格変動が急ピッチで乱高下する証券や外国為替関連商品などは、店頭に出向いている間に多大な利益を逃したり、損害を被ることになってしまいます。

 じつは、コンピュータ・ネットワークによる金融取引は、インターネットが普及するずっと以前から金融業界内部で行われていたわけですが、インターネット普及による最大のインパクトは、それまでプロの投資家など特殊な人々の世界と考えられていた金融取引という専門行為を、それこそ世界中の誰もが、いわば普通の感覚で取引できる行為へと拡大させたところにあります。

難攻不落といわれた日本市城だったが・・・

 インターネットと金融の融合は、さらに大きな変化をもたらしました。それはつまり、インターネットというグローバル手段の登場による金融のグローバル化です。かつて、日本の金融業界は、典型的な規制と保護を特徴とする業界でした。金融システムという公共性の高い社会基盤の「信頼性と消費者を保護する」ための種々の規制があり、外国資本の金融機関などから見れば、難攻不落の「日本市場」ならぬ「日本市城」だったようです。

 しかし、インターネットの普及で、一般の消費者から見ても、外資の金融商品の中にも「意外と安くて安全なものがある」ことが分かってきたのでした。日本が世界第2位の経済大国になった現在、インターネットの普及によって、あらゆる業界で「業界保護か消費者保護か」選択が迫られている中で、いろいろな課題が露呈してきていますが、その魁が金融業界であるといえます。