第13回 インターネット革命はどう流通を変えるか?
(2007年1月)

「待ちの姿勢」Web1.0型ビジネスの終焉?

 インターネットによる流通業界の革命は、1990年代の後半から起こり始めました。代表的ものとして、アマゾン・ドットコム型の書籍販売、イーベイ型のオークション、ヤフー型のショッピングモールなどが知られていますが、2000年から2001年のネットバブルの崩壊を経て、最近になってようやく、その本質らしきものが明らかになってきました。それは、以下の3点に集約できます。

 ① インターネットの流通業への実体経済的影響力の確立
 ② Web2.0の登場によるポータル型から検索/マッチング型への移行
 ③ 次世代情報金融インフラの確立を促進

 ①については、特に米国の自動車業界を見ると理解できます。中でも、オークションによる取引仲介として、すでに全米で最も中古車を販売する企業となったインターネット競売最大手イーベイの自動車部門、イーベイ・モーターズの躍進ぶりは注目されます。2000年4月に開設から、わずか3年で全米No.1の自動車サイトになり、取扱高もリアル企業のオートネーション(AutoNation)やカーマックス(CarMax)を圧倒する存在になっています。昨年度の売上実績では、3分の1にあたる136億ドルが自動車部門となっており、これは米国内の自動車販売業者の総売上げを上回る数字です。

 このように米国では自動車購入の購買プロセスが劇的に変化しています。事実、2004年の新車セールスの22%はオンラインで購入されており、また主要自動車メーカーのオンライン広告費についても、2005年の14億ドルから2007年には27億ドルと、2年間でほぼ倍増すると予測されています。

実体経済価値を伴ったWebX.0の登場

 ②については、インターネットビジネスにおける、Web1.0型の「集客」=「滞留時間」=「視聴率」のポータルサイト・ビジネスモデルに変化が起こってきているということです。すなわち、ポータル型販売の本質は「待ち型」であるといえます。よりサイトの集客力を高めるために、サイト内案内を充実させ、販売促進活動を行うツールとして、例えばメルマガなどがありますが、最近では迷惑メールとして扱われます。これに対して登場したのが、対極にある「攻め型」の検索/マッチング型の販売です。

"The Network is the Economy"の時代へ

 この新たな販売手法は、SEO(検索エンジン最適化)活用による検索結果の上位表示や検索連動型広告によるスポンサーサイト表示、アフィリエイト、エリア・マッチング広告などを複合的に組み合わせて積極的な販売活動を自動的に行うものです。

 ③については、現在のインターネットによる流通では、「受発注と決済とが統合されていない」のが現状です。十分な「実体経済価値」を創造し始めたインターネットによる流通業革新は、今後いよいよWebX.0ともいうべき方向を示すことになると思われます。

 Sunの創業者の一人、ビル・ジョイがかつて提唱した、"The Network is The Computer"が実現したいま、インターネットの世界では、"The Network is The Economy"時代を指向する新たな段階を迎えています。ネットは、これまでの仮想世界ではなくて、実体経済活動を担うことへと向かっているのです。