第15回 インターネットの新たな潮流P2Pとは?
(2007年3月)

第1世代のNepsterに始まる進化のカタチ

 今回は、Winny裁判でも話題となった"P2P"を取り上げます。P2P(Peer to Peer)に含まれるPeerとは、同等の人、対等の人、同僚、友人、仲間という意味で、インターネットに頻繁に出現する言葉です。プロバイダー同士がIXで「Peerを張る」という場合、対等接続であり、相互に無償でトラフィック交換をします。対立する概念が"クライアント/サーバ"で、サービスを受ける側と提供する側が分離されています。Webは、WebブラウザとWebサーバで構成される典型例です。

 P2Pは、Webに続いて登場したインターネット上のコンピューティング・スタイルで、1999年以来今日まで3つの世代へと進化してきました。まず第1世代となる『ハイブリッドP2P』はNapsterが代表例です。これは音楽のMP3ファイル交換サービスで著作権訴訟問題になりました。データの場所を探索するインデックス・サーバを有することが特徴です。

Skypeは第3世代の典型的なサービス

 第2世代『ピュアP2P』は、米国Nullsoft社のGnutellaが代表例で、音楽ファイル交換に利用されましたが、サービス主体が不明のため著作権訴訟は起こっていません。データの場所を探索するのがフラディング技術で、隣接ノードへ探索クエリーを"バケツリレー式"に発行して見つかれば、元の経路を辿って問い合わせ元へ知らせる仕組みです。第3世代の『スーパーノード型ハイブリッドP2P』は、オランダのFastTrack社で開発され、データの場所を探索するために一般ノードから選ばれた複数のインデックスノード群、スーパーノード・クラスターの存在が特徴です。この第3世代のP2Pはライセンスビジネスが主体で、無料電話のSkypeもこの技術を採用しています。P2Pの特長は、①冗長性(すべてのノードがバックアップする)、②拡張性(アクセスの集中がない)、③オーバーレイ機能(セグメント境界の意識が不要)、④非同期アクセス機能、⑤オフライン・ローカル・データ処理機能、⑥アドホック構成(参加者同士の合意で参加が成立)といった6つをあげることができます。

The Network is the Computerの実現へ

 P2Pは、個人利用面では、「インターネットの匿名性」と連動して情報を匿名で入手可能なことから、情報の入手経路が特定困難であるため、P2Pファイル交換による違法コピーが流行するといったことが社会問題化していますが、その一方で、ビジネス利用面では新たな可能性が増大しています。Groove社のサーバ不要のP2Pグループウェアでは、"企業横断型情報共有環境"を提供しています。また、Kontik社やBitTorrent社は新世代のP2P型CDN(Contents Delivery Network)サービスを提供しています。

 こうしてみると、P2Pはそれ自身に著作権問題を引き起こす印象がありますが、それは著作権保護技術を内蔵させた上でインターネット上にオープンにするべきだったのに、先に世に出てしまった・・・。そのところに背景があるのです。つまり、テストコースを走るべき試作車が、いきなり一般道路を走って事故を起こるようなものです。P2PはWeb2.0と同様、インターネットの利用者自身が「自らのコンピューティングパワーとともに参加することにその本質があり、今後新たな利用法が期待できる極めて根源的な技術革新です。ビル・ジョイ(Sunの創業者の一人)がかつて言った"The Network is the Computer."をまさに実現するものだといえます。