第16回 インターネット革命は教育を変えるか?
(2007年4月)

学校のブロードバンド接続率はほぼ100%に

 私が「インターネットと教育」に関わったのは、1998年に当時の野田聖子郵政大臣の産学のアドバイザリ委員会において、「学校インターネットプロジェクト」の提言を行おうという時でした。当時、学校のネット接続率は、アメリカでの平均が78.0%(小学校75.0、中学校89.0=97年数字)であったのに対して、日本の平均は18.7%(小学校13.6、中学校22.7=98年3月数字)でした。またその当時、アメリカにおいてはクリントン大統領が「2000年までに全米の教室などを結び、12歳でみんながインターネットにアクセスできるようにする」と表明していますし、さらに、フランスやドイツでも、2000年までに全学校へのネット接続を完了させる目標で整備が進められていました。その後、わが国では当時の通信・放送機構(現・情報通信研究機構)によるプロジェクトが始動したことで大きく前進し、その結果、学校インターネットのブロードバンド接続率はほぼ100%、となり、インフラ面では世界をリードするまでになりました。

関心の低さはきわめて重大な問題

 私はその少し前から、NPO法人学校インターネット推進協会に参画して、学校で制作されるWeb教育教材コンテストなどを行う活動をしているのですが、そこでいつも感じるのは、インターネットと教育に対する社会全体の関心の低さです。とりわけ、初等中等教育分野における関心不足は深刻です。そこで今後は教科としての「情報」の設置だけでなく、理科や社会などの必須科目の授業における実教材として、インターネットを前提にした初等中等教育を新たに作り込んでいくことが有効だと思われます。これは必須教育に組み込まれた情報通信リテラシーをいつの間にか身につけてしまう仕組み作りを意味します。よく「情報通信技術に強い教師の不足がこの仕組み導入の阻害要因だ」との指摘がありますが、じつは、いまの生徒たちというのは、マニュアルもなしにインターネットに接続されたコンピュータを操作する能力を先生以上に備えているのです。

ネット社会でも人づくりは国家百年の計で

 一方で、最近多くの相談を受けるようになったことがあります。それは大学や大学院教育における社会人向けの生涯教育の手段としてインターネットを活用することについての相談です。21世紀初頭のいま、激化する国際競争時代において大成功を収めた情報通信インフラ整備に甘んじることなく、株式会社による大学・大学院教育の規制緩和なども相俟って、多忙な社会人向けのインターネット上の再教育による人材育成は「情報通信立国」を目指すわが国にとってきわめて有効だと思われます。

 このネット上の大学・大学院大学による展開には、民間企業や既存の学校法人や独立行政法人にとっての事業参入のインセンティブを与えるための制度面や技術面での環境整備が重要です。例えば、いま焦眉の課題である教育基本法の改定問題では精神面を重視した改革が進められようとしていますが、それと併行して、急速に進む情報通信技術の革新に対応した「インターネットによる教育革命の推進」が非常に重要だと私は考えています。

 情報通信立国へ向けてたインフラ整備が一息ついたいまだからこそ、情報リテラシーを初等教育からしっかりと身に付けさせる新たな仕組み作りが大事です。そして、彼らが成長し、社会人となっても継続してスキルアップが叶えられ、さらなるキャリアアップを実現できる・・・。そのようなダイナミックに人が躍動できる新しい視点に立った社会基盤の整備が必要な時ではないでしょうか。