第17回 インターネット革命は医療を変えるか?
(2007年5月)

最新情報を入手できる医療サイトが人気

 今回は、「インターネット革命は医療を変えるか?」という話題です。これまで、医療は、人の命を預かることから、情報の取り扱いには、極めて慎重な対応が要求される分野として位置づけられてきました。しかし最近では、インターネットによって医療情報の意味が再認識されつつあり、大きく変わろうとしています。

 日本の例として紹介したいのは、「医学、医療分野の専門出版事業株式会社メディカルトリビューン(*1)」と「消費者の口コミ型病院検索MEDWEB(*2)」で、両サイトは各々、医師と患者の視点から、本格的な医療分野の最先端情報を入手したり、症状や診療科目などで近くの病院を検索し、ユーザー同士の体験談を知ることができます。

医師と患者の関係を変えたインターネット

 米国は先行しており、1998年頃から、最新の医療ニュース、臨床上のアドバイスや支援グループを求めて能動的に情報受発信する患者数は増加の一途をたどっています。たとえば、典型的な人気サイトであるIntelihealth(*3)では、医療だけでなく健康関連の話題が多くみられます。

 テキサス大学ヒューストン保健科学センターでは、オンラインで別の臨床専門医の意見を求めたり、オンライン情報を収集したりするのがごく一般的になっています。同センターを訪れる患者の多くは、インターネットを通じて自分の状態や治療の選択肢について把握ずみのようです。

 このような潮流の中で、多くの医師は、インターネットが医師と患者の関係、健康に対する考え方をいかに変えているかという点で、不安を抱いているようです。 すなわち、多くの医師にとって、自分と同等か、それ以上の情報を持つ患者を相手にすることに困難を感じているのです。

 しかしながら、いくつかの「信頼できる医療情報源」の地位を確立したサイトがある米国では、すでに患者向けオンライン医療情報市場は急速な成長を続け、情報へのアクセス数は数十億(年間累積)規模に達し、オンライン処方薬の消費も急増しています。米国ではこの結果、多くの医師が、患者が自分の医院に電子メールで連絡できるシステムを確立し、インターネットによる「診療時間の節約」が進行しています。そして、オンラインで患者と効果的にやり取りすることこそが、医師としての重要な臨床技術だと考えられるようになっています。要するに最も効果的な方法は、診療行為の一環として患者から情報を集めることだということです。

新しい地域医療ネット構築の課題とは?

 最後にインターネットによって起こりつつある医療の変化をまとめてみます。

 ①自宅に居ながら医師のアドバイスを受けることが可能
 ②診療外の時間に簡易的な治療が可能
 ③一般の人に医療知識が増える
 ④過疎地や無医村などで医療相談・応急医療が可能


 しかし、当然ながら、多くの問題も残されています。それは特に、セキュリティの問題です。患者の個人情報の漏えいや偽医師の出現などですが、これらを解決するためには、ブロードバンドとセキュリティを中心にした新たな情報通信技術を駆使した、地域医療ネットを構築することが有効だと思われます。

(*1):http://www.medical-tribune.co.jp/
(*2):http://www.medweb.ne.jp/
(*3):www.intelihealth.com