
第18回 インターネット革命は法律を変えるか?
(2007年6月)
仮想社会に必要な法規制と倫理規範
今回は、「インターネット革命は法律を変えるか?」という話題です。
インターネットの普及という現実が先行し、法律は大きく遅れています。インターネットの威力は絶大なものがあり、知らないうちに法律違反をしてしまう可能性が生まれています。思いつくだけで、著作権・特許・商標などの知的所有権の侵害、表現の自由と他人の権利の侵害、出版と報道の自由と名誉毀損、ドメインと商標の関係、仮想世界でのビジネスと法規制など多くの解決すべき課題がありますが、これまで、自己責任で何とか乗り切ってきたように思えます。
これまでの常識では、放送は、公序良俗の立場から情報の中身に責任をもち、通信は、秘匿義務の立場から中身にタッチしないということでしたが、インターネットは、中間のメディアとなっており、通信網を手段として使いますが、自由を尊重すると同時に、社会に害を与えたり、他人の権利侵害を防止する仕組みが必要となっています。言い換えれば、「インターネット時代に備えるべきマナーなど倫理規範の確立」とそれを実現する「技術と法律の連携プレー」が要求される新たな挑戦が始まったと言えます。
フラットな集まり、ILCの活動に期待
その意味で、紹介したいのが、「インターネット法律協議会」(Internet Lawyers Conference、略称ILC)の活動です。同協議会は、弁護士を中心として1996年9月に発足した「インターネット弁護士協議会」を起源とし、弁護士だけでないフラットな集まりとして、2002年3月に現在の名称に変更しました。 関係者間の相互交流、法およびネットワークに関連する様々な活動、法的サービス・法的情報へのアクセスを容易とするための活動を行い、またはそのための場を提供することを目的としています(http://www.ilc.gr.jp/index.htm)。
ここでは、インターネットの構築に携わる立場の人と利用者によるさまざまな共同作業が行われており、現実に起こっている法的諸問題は、法律家だけの問題ではなく、あらゆる専門家が自分自身の問題として考えていく場を提供しています。
Web2.0時代は技術と法律の連携プレーが重要
要約すると、今後、「技術と法律の連携プレー」として考えていくべき課題としては、以下のようなものが考えられます。
①Webサイトからの個人情報の収集・利用・保護
②インターネットでの情報流通に伴う著作権・匿名性
③インターネットでの商取引
④インターネットでのコミュニティサイトの運営
⑤インターネットでの広告と景品表示と不当表示
また、以上のような現在の課題に対処する必要がある中で、以下に示すような新たなWeb2.0文化が醸成されつつあることも事実です。
①オープンソース(多人数での公開ソースコード゙によるソフト開発)
②クリエイティブコモンズ(著作権違反せず・著作権許諾せず)
③フォークソノミー(folks【人々】とtaxonomy【分類】の融合)
④進歩的性善説(Wikipediaのように参加者は善人という前提が成立)
⑤CGM(Consumer Generated Mediaが新聞、TV並みに発展)
このように、インターネット革命は、日常生活により深く浸透しているがゆえに「技術と法律の連携プレー」の重要性は、ますます高まっていくものと思われます。
情報通信ジャーナルは財団法人電気通信振興会で販売しております。