第20回 インターネット革命は中小企業経営を変えるか?
(2007年8月)

情報収集力と意思決定力を高めるために

 今回は、「インターネット革命は中小企業を変えるか?」という話題です。インターネットにより、変化は、益々激しさを増しています。社会の発展を担う企業にとって、変化への対応は極めて重要です。中小企業は、大企業よりも就業人口や企業数において上回っています。
 時代に対応した、新規事業、新分野進出、新製品開発は、企業の大小に区別はなく新たな挑戦であり、インターネット時代を迎えて、明確になってきたのは、インターネットを駆使した情報収集力と意志決定力が企業活動を大きく左右するということです。

先進的中小企業での取り組みと実状

 中小企業の先進的企業は、既にITベンダーに依頼して、インターネットを活用したさまざま取り組みを行っています。たとえば、ホームページによる企業紹介、求人、商品紹介、ECによる商品販売、ネットマーケティング、SEO対策(検索エンジン上で自社のウェブページアクセスを高めるための対策)などがありますが、未だ「手段の目的化」の域を脱しておらず、効果が上がっているとは言えない状況にあります。

インターネットを目的ではなく経営手段に

 分野によって、たとえば量産品を受注していた下請製造業は、発注企業の海外移転などで従来型下請けの受注量が激減しています。その原因は、自社技術の劣化ではなく、日本企業による逆輸入、外国企業の競争力向上等の変化要因がありますが、本質はインターネットの普及による情報のグローバル化にあると考えられます。
 このため、インターネットを「目的ではなく経営手段として」とらえ、以下のようなことを考えてみる必要があると思われます。

(1)新規事業に対する「信念」と事業の存在価値と成功への「執念」が重要:この「信念」と「執念」を根拠付ける手段としてのインターネット
(2)新規事業の製品あるいはサービス、市場、顧客が現在の本業と離れていないことが重要:この本業と新規上との連続性の検証手段としてのインターネット
(3)新製品と新サービスを提供する際に、インターネット時代にはビジネスモデル特許に先例があるように、知的財産権は、物だけではなくサービスにも及ぶことの認識が重要:この自社事業において先行者がいないことの確認と知的財産権の確保の手段としてのインターネット

戦略的インターネット型経営

 中小企業は、従来、資本、人材など様々な面で、大企業との格差が大きかったわけですが、インターネットを駆使することによって、企業理念、競争関係、およびこれを実行する社内外の組織関係が明確化されると考えられます。
 インターネット革命前夜に誕生した米マイクロソフト社は、中小企業としてスタートし、インターネット革命の本質を経営者が理解し、インターネットによる経営危機をチャンスへと転換させ、世界の大企業へと成長した典型的な企業であるといえます。

 そしてこのマイクロソフト社にとって次なる成長課題は、中小企業市場の開拓なのです。