第21回 インターネット革命は不動産業界を変えるか?
(2007年9月)

高成長を維持する米国経済と日本人との違い

 今回は、「インターネット革命は不動産業界を変えるか?」という話題です。成熟社会である先進国にとって、経済成長の維持は、大きな課題ですが、低成長時代に入って久しい日本と高成長を維持する米国との相違に、経済指標としての不動産業界があります。
 米国は、元来、終身雇用制がなく、人々の移動が頻繁に起こるために不動産取引が活発でしたが、ここ10年でさらに同業界を活性化したのがインターネットです。
 日本においても、インターネットが同業界を大きく変えつつあります。

最近の調査結果ではネットが参照媒体1位

 2007年になってからのインターネットの不動産取引への影響度に関する興味深い調査結果が、(株)セプテーニの「Webマーケティングガイド」に掲載されています(調査強力:マクロミル)。
 20代から50代の男女を均等に割り付けた同調査によると、利用者が不動産取引を行う際に参照している媒体のベスト6は以下の通りです。

(1)パソコンのインターネット:130ポイント
(2)不動産会社の店舗:117ポイント
(3)折込チラシ:100ポイント
(4)雑誌:70ポイント
(5)新聞:57ポイント
(6)テレビCM:50ポイント

 同調査結果を見ると、不動産情報を手軽に入手できるインタ-ネットの便利さが群を抜いていることが証明されています。しかし、一方では、「不動産会社の店舗」も相変わらず利用率が高く、利用者が専門家との直接対話を望んでいることがわかります。

インターネットの不動産情報への不満と不安

 インターネットは、情報入手手段としては、便利である一方、多くの不満や不安を喚起していることも事実です。同じく「Webマーケティングガイド」によると、インターネットの不動産情報に関する不安事項のワースト6は次の通りです。

(1)周辺情報(治安や騒音):129ポイント
(2)Web上の写真との違い:113ポイント
(3)日当たり:110ポイント
(4)不動産屋自体:90ポイント
(5)契約料:80ポイント
(6)駅からの距離:77ポイント

 同調査からわかることは、インターネットは、供給者側と利用者側の関係を効率化するものでしかないということです。

Web2.0の進展で、活性化する不動産業界

 上記のワースト調査の上位にランキングされているのは、間取りや広さといった客観情報ではなく、周辺情報、写真との違い、日当たりといった直接感覚情報です。
 ここで、インターネットの力量は、この程度か?いちいちで出かけていくしか調査できないのか?と結論を下すのは性急すぎます。
 というのは、インターネットの最近の発展方向には、何度か登場したキーワード、Web2.0というトレンドがあるからです。すなわち利用者参加型の仕組みが発展しており、直接感覚情報の入手には、インターネットを通じて不動産情報に関心の高い利用者コミュニティに問いかけたり、口コミサイトの利用が大きな威力を発揮します。こうして利用者は、インターネットを通じて、真に有用な肯定的な情報を入手した後、最後の確認に出かければよくなったわけです。
 
 インターネットの利用という面では、まだまだ日本の先を走っている米国の不動産業界が、国家の経済を牽引しているといっても過言ではないと言えます。