第22回 インターネット革命はNGNとどう関係するか?
(2007年10月)

ヨーロッパ勢が主導したNGNの誕生

 今回は、「インターネット革命は次世代キャリアネットワークであるNGNとどう関係するか?」という話題です。
 インターネットによる技術革新は、第2回でも述べたように通信業界に大きな変化をもたらしましたが、具体的には、マイクロソフト社に代表される「ネットワークのこちら側の世界」に続いて、グーグル社に代表される「ネットワークのあちら側の世界」を新たな産業として産み出しました。この結果「ネットワークそのものの世界」には、IPを主体とする通信ビジネスの構造変化が起こりましたが、インターネット発祥の国である米国やブロードバンド/モバイル先進国となった日本と比較して、欧州勢は関与できなかったという構図があり、ETSI(欧州の通信標準化団体)からの提案で、ITU-Tの標準化作業が進行中のNGNが生まれました。

「高信頼化」と「低コスト化」を同時に実現

 NGNは、以下の4つの特徴をもっています。

IETF(インターネットの標準化団体)が策定したSIP(session initiation protocol)を基本にIPネットワーク上での音声データ、映像等マルチメディア・サービスを実現
固定通信網と移動通信網を統合したシームレス・サービスとして
FMC(fixed mobile convergence)を実現
基本ネットワーク・アーキテクチャとしてIMS(IP Multimedia Subsystem)を採用
【3G携帯電話標準化団体3GPP(3rd Generation Partnership Project)規定による】
ネットワーク品質、端末の能力に応じたエンド・ツー・エンドでの帯域保証を実現

 これは、ベストエフォート型のインターネットでは困難だった帯域保証等「高信頼化」と、回線交換機ではなくルータによる「低コスト化」とを同時に実現する次世代ネットワークとされています。しかし、経路制御にルータは使いますが、エンド・ツー・エンドの通信手順にTCPと異なる方式を用いるために「インターネットとは異なるネットワーク」です。

NGNがインターネットに与える影響は?

 そこで、インターネットとどういう関係になっていくのか?という疑問が湧いてきますが、これに対する回答には、2つが考えられます。第1は、キャリア網がPSTN(公衆電話交換網)からNGNに変化するため、インターネットは、従来のPSTN上ではなくNGN上に構築する時代を迎えるということです。
 第2は、インターネットでは困難なアプリケーションを実現するためのネットワークだということです。
 これからその内容が明らかになってくることになりますが、主に「ネットワークのあちら側の世界」にアプリケーションの自由度をもたせてきた、オープンなインターネットと異なり、NGNは、アプリケーションをクローズドに展開することを指向しています。

新産業創出のコアネットワークへ

 具体的には、企業向け市場では、既にIT化が進んでいる大企業市場と異なり、未だIP化もIT化さえもされていない中小企業ネットワークから、また、家庭向け市場では、2011年のアナログ停波を見越した通信放送融合ネットワークから立ち上がってくると考えられます。

 NGNは、インターネット革命がもたらしたIPを基本とする、百年ぶりの公衆電話交換網に代わる通信ネットワークインフラの刷新であり、国際競争力強化のための新産業創出のコアネットワークへと育てていくことが重要です。